第4話 浅海 結 Ⅱ

彼はどう思っていたのだろうか。知り合って間もない人としてはちょっと盛り上がりすぎた思う。

 病室で読んだ本の影響なのだ、あの帽子の一件以来私はいつも彼のことを意識してしまっている。

 彼を砂浜で見つけた時はとても驚いたのと同時にとてもうれしかった。声をかけようかは凄く迷ったが、結果的に喫茶店に誘えてよかったと思っている。結果オーライだ。


 時間を見て、もうそろそろ戻らないとお母さんや看護師にばれてしまうと思って私は帰ることにした。


 結局バレた……

 病室の扉を開けて入ると母親が仁王立ちして待っていて、顔は……怖い。

「何やってんの結! あんた、どこいってたの!?」

 いきなり怒鳴られた。まぁ、予想はしていたけど怖かった。

「もっ、いいじゃないちょっとぐらい外に出て散歩するぐらい。何か減るもんでもないし」

 怒鳴ってきたから少し文句を言ってやった。しかし、

「なによ!ねぇ、ちょっとぉ!」

 また怒鳴ってきたので私は聞き流して病室の簡易ベットに潜り込んだ。

 私が潜り込んでからも母はずっとグチグチ言っていたのだが看護師の人がやってきた。

「まぁまぁ、お母さんもその辺で」

 看護師がそう言うと母は「もう!」と牛のように言って近くの椅子に座った。

「それでは結さん、検査に行きましょう」

 またか、と思った。入院してからなぜか二日に一回検査をしている。今日もそのうちの一回だった。中でも毎回の検査に含まれる採血で注射器を刺されるのが私は一番嫌だ。毎回検査の度にやっているので痕が残るようになったからだ。

 そして、今日の検査後にお医者さんに『検査次第では今の状態を改善するために、手術をするかもしれません。初めてですので、気持ちの整理をしておいて下さい』と言われた。

 ちょっと希望が見えた私はうれしかった。

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