第2話 浅海 結 Ⅰ
何の変哲もない日常。朝起きて、ご飯を食べ、学校へ行く。友達と昨日のドラマの話、この前行った好きなバンドのライブの話などと他愛もない話をして、笑って、そんな一日を過ごす……そんな日常が続くはずだった……
最近何もかもが嫌になりそうだ。
たまにもう生きていても仕方がないと思うぐらい気が重くなることがある。
なんで、なんで私がこんな目に……
朝起きると目の前には真っ白の壁、ベッドも布団も枕も白色だ。かつていたハラハラとワクワクでカラフルだった世界は今となってはモノクロの世界……
半年前の健康診断が事の発端だった。
母親だけでよかったものの、ついでだからって私の分まで予約していた母に病院に連れて行かれた。
まだ若いからいいよと言ったが、既に申し込み済みのため、後の祭りだった。
検査終了後、お医者さんから話があるからと言われて待っていると、母だけが先に呼ばれて診察室の中に入っていった。私はてっきり二人揃って呼ばれるものだと思っていた。
十分ほど経った頃、思いつめたような、とても深刻そうな表情をした人が出てきた。
その人が自分の母だとはすぐに気づかなかった。
「どうしたの……お母さん」
母は深い深呼吸をすると私に言った。
「結、一緒に先生の話を聞いて」
そう言われて私は正体のわからない不安感とともに診察室に入った。
そこからのことはあまり詳しく覚えていない。
ただ覚えているのはお医者さんの話すべき相手が私自身であったことと、どうやら私は何か重い病気だということだった。
その後、私はすぐさま看護師さんに精密検査に連れて行かれてしまった。
不安感と恐怖感など、さっきとは違って様々な感情に押しつぶされそうな私は色々と手続きをする母と別れなければならなかった。
連れて行かれ、L字の角を曲がるときにふり返ると母は私を見つめていた。
そんな母の表情は生まれて初めて見た。
母はその日のうちに私の病院や学校の手続きを済ませ、私は入院した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます