第1話 宮地 雫 Ⅰ

雨……

 僕は雨の日が嫌いだ。

 じめじめして、まるで世界が泣いてるかのように寂しく悲しい気分になってくる。

 そしてたまに両親のことを思い出してしまう。

 いつもと変わらない時間に起きた。今日子叔母さんの仕事の都合でいつも朝が早いため、僕もいつのまにか早く起きるようになっていた。

 制服に着替えて部屋を出て一階のリビングに下りると、昨夜、隣町で起きたらしい事故の報道を見ていた今日子叔母さんは僕を見てテレビを消した。お互いにおはようと言って美味しい朝食を頂く。

 ごはん、紅鮭に味噌汁と納豆。どこにでもあるような日本の朝食。だが、今日子叔母さんの作る紅鮭は、小学校の給食で食べるものとは違い、味が濃くておいしい。

 朝食を済ませると洗面所で身支度をして、部屋で着た制服にブレザーを着て家を出た。

 学校まではそう遠くなく、散歩ルートを通り過ぎた先にある。最初は通学路を戻るような散歩ルートは嫌だったが、朝の登校では朝の凪いだ海を見ることができて、夕方の散歩では夕日に照らされた海を見るこどができることを知ってからはむしろ毎度楽しみだ。

 家からだいたい三十分ぐらい歩くと学校に着く。だから僕は自転車やバスでなく徒歩での通学だ。

 両親を亡くしてから、大切な人がいなくなって残された人がどんな気持ちになるのか分かるようになった。

 中学校時代はショックで友達とはだんだん上手く付き合えなっていき、そのまま卒業して高校に入ってからは特に友達作りをしようとはせずに過ごしていたため、案の定これと言って友達がいない。


 学校に着くなりすぐさま教室に向かった。いつも朝が早いため、今日も一番乗りだ。

 教室に入って三十分ほど経つとちらほら生徒が入ってきた。隣の席にクラスメイトが座ると社交辞令の挨拶をした。すると教室の前方のドアが開いて担任の先生が入ってきた。

「はい、おはよーう。ホームルーム始めるぞー」

 担任はいつも通りの挨拶をしてホームルームを始めて、ホームルームの連絡は授業参観の案内用紙の提出日やテストについてのことだった。

 授業参観もテストも嫌だな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る