第6話 《フルスクロ》
「マズいッ! 月翔!」
夕影隊長が奴の右手を押さえにかかる。
「今、これで俺たちをやろうとしただろ。地球に墓標を作りたいか? ああん?」
奴の手には拳銃のようなものが握られていた。戦意剥き出し、殺意ありまくりかよ。
――俺が言えることじゃないんだけどさ。
「奪っても無駄だ。それは俺にしか使え……」
ヒュン!
高速で何かが風を切る音が聞こえたと思ったら、俺は夕影隊長の少し右をかすめるようにして弾を飛ばしていた。
「当たったらどうするんだよ!」
ゴツンと大きな拳で、制裁を受ける俺。
「地球でもゲンコツはあるのか……」
「ん? 何か言ったか?」
鉄拳制裁に感心していたソロスだったが、それ以上に、自分専用の拳銃フルスクロが他の人間にも使うことができたということに疑問を抱かずにはいられなかった。
誤作動か、あるいは……
「まあ、ごちゃごちゃ考えるのもめんどくさいか」
こうやってすぐに考えるのをやめるのが俺の悪いところだなあ。ソロスは我ながらそう思っていた。まあ、殺されたら俺が地球人以下だったってことで、それでいいんだ。
「すまんな。あんたはしばらく拘束させてもらうぞ」
夕影隊長が奴に錠をして、身動きが取れないようにした。奴は黙ったまま、これ以上抵抗する様子はなかった。その様は、刑の執行を待つ囚人のように肝が据わったように見えていた。
こうして、四年ぶりの月の大接近に伴う地球の危機は、この純白の隕石の到来で終了したかに思われた。だが、これはただの序章に過ぎない。これから始まる地球と月の大戦の幕開けに過ぎないということを俺たちは知る由もなかった。
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