第38話 正義を守る変態達

 ももかんは村山アニメーションにやってきた。


「あれ?ももかんちゃん。何かトラブルかい?」


「いえ。そろそろ晩御飯用にカレールーとジャガイモを買いに来ました」


「カレーかぁ。カレーいいねぇ。五郎ちゃん。僕カレーが食べたくなっちゃったなぁ」


「あ、ももかんちゃん。カレールーはともかくジャガイモは下のコンビニでは売ってないからね。100メートルくらい先にあるドラッグストアで買ってくるといいよ」


「薬屋で野菜を売っている・・・。こっちの世界にも魔術師が多いみたいですね」


「いや。薬の調合じゃなくて純粋の食材目的で野菜や肉を売ってるんだよ?」


「それじゃあ行ってきますね」


「車に気を付けてね」


 ももかんは村山アニメーションの近くにある、薬局にジャガイモとカレールーを買いに向かった。


「にしても織田信長のデータがあってよかったっスね監督」


「最初は経験値稼ぎ用のモンスターを出してくれって、言われて慌てたけど。織田信長だからね。オタトモの修学旅行回で新幹線に乗って本能寺を観に行く話があって助かったよ」


「ていうか他にもモンスターを出してくれって言う要望出てましたよね。ももかんちゃんから」


「そだよー。砂漠の国を旅しているから、いかにも砂漠っぽいモンスターを出してくれって。今画麻ちゃんがスフィンクス描いてる」


「うわー。動かしにくそう。砂漠といえばこいつっすげどめんどうじゃないすっか??」


「動かさないよ。砂漠の女王の護衛として隣に置くだけ。で、戦いはスフィンクスらしきクイズ勝負さ」


「原典どおりっすねぇ」


「あと砂漠の国だから当然こいつも出しておかないと」


「あー砂漠のモンスターと言えば定番すねぇ」


「これもデータがあって助かったよ。作業がスムーズに進むってほんといいねぇ」



「ただいま戻りました。あれ?」


 カレールーとジャガイモを購入し、洞窟に戻って来たももかんは異変に気付いた。まず、目の前にふるちんが倒れている。


「た、大変だももかん・・・!!」


「なにやっているんですかふるちんさん?」


「俺は大量獲得した経験値でレベルアップしまくっていたんだが」


「ずっとテレッテーテレッテー言ってましたからね」


「どうやら最大HPが上がり過ぎてしまったらしい。つまり、俺の初期HPが


レベル1

最大HP16

現在HP16


 だとして、第六天魔王信長を倒してレベルアップしまくって


レベル50

最大HP5000

現在HP16


 になっていたとする」


「最大HPに対して現在HPが低すぎるので、攻撃を一回を受けていないのにも関わらず瀕死状態になってしまったんですね」


「どうやらそうみたいなんだ」


「まぁ現実の中世ヨーロッパでは剣術の修行をして、身体能力が上がっても、修行の際消耗した体力は食事や睡眠で休息を取らないと回復しませんからね。というわけでどうぞ」


 ももかんはふるちんの眼前ににユンケルを置いた。


「なんだこれ?」


「ふるちんの世界のポーションですよ。劣った遅れている異世界のポーションの十倍よく効くんでしょう??」


「だから現実世界の栄養剤にそこまで劇的な効果ねぇよっ!!!」


「では比べてみましょう」


 ももかんは薬草を置いた。


「さぁ!ふるちんさんの世界で2000円で買ったユンケルと私達の世界で銅貨24枚で購入できる薬草。どちらかが回復効果があるか試していただきましょう!!!」


 俺は日本で2000円で買えるとユンケルと、そして異世界のどの街や村でも銅貨24枚で気軽に変える薬草。その両方を口にした。


「ごべんなさい。異世界に来たニホンジンの代表として言います。この世界においては薬草の方がユンケルより効果があります・・・」


 俺は泣きながら事実を報告した。


「そう言えば母さんはどうしました?折角なので母さんが好きそうなお酒も買ってきたのですが」


 ももかんは千紫万紅神便鬼毒という日本酒の瓶を抱えていた。


「そうだ!お前の母さんだ!!いきなりモンスターが現れたんだ!!!動けない俺に変わってガラさんが連中と戦ったんだがあっけなく掴まってしまったんだ!!!」


「え?母さんが。つまらない冗談ですね。母さんは並のモンスターには負けませんよ。それにこの辺りにはそんな邪悪は気配はありません。ちゃんと邪悪探知(ディテクト・イーヴィル)の魔法で調べましたから」


「本当だって!!ほらっ!!!!」


 俺が指さす方向。そこには多数の人型モンスターに手足をからめとられているガラさんの姿があった。


「う、く・・・はぁはぁ・・・。ち、力が・・・抜けていく・・・」


「な、なんですか。あの全身包帯だらけのモンスターは?」


「え?ももかんお前ミイラ男知らないの?あんなクッソ有名なモンスターを?」


「あ、すいません。私一応中世ヨーロッパ以外の知識は疎いという設定なので」


「信長詳しかったじゃん」


「西洋料理とイエスズ会の宣教師繋がりなので範疇に入ります」


 なんというガバ基準。


「しかし、妙なミイラ男だな。どうして松葉杖やら点滴台を持っていたりするんだ?」


「なんか魔法学科の賢者の円高で工場が大変なら、2割位のサービス残業をすればいいでしょ?生に登場した、主人公に理不尽な暴力を振るわれ、病院から出てきたところを涙ながら命乞いをしているところを問答無用に止めを刺された真っ当な労働者たちに似ていますね」


「酷いなろう産糞アニメだなそれ!!!」


 その時、ももかんのスマフォが鳴った。電話を取る。


「あ、水鳥監督ですか。え?ミイラ男さん達に伝言?はい。わかりました。ミイラさーん。松葉杖と点滴台を捨ててください」


 ミイラ男達は松葉杖と点滴台を捨てた。あいつらも別のアニメからの流用なのか。


「まぁいいや。ミイラ男っては砂漠地方特有のアンデッドモンスターだ。古代エジプト地方には人間は死後蘇るっていう信仰があったんだが、その為には肉体から離れた魂が戻る場所が必要だろ?そのために死体に防腐処置を施した物がミイラだ。ただしまぁ普通はそうほいほいと復活しないからこういう包帯まみれのアンデッドモンスターとして生者に襲い掛かるって寸法さ」


「アンデッドモンスター?それならディテクトイーヴィルの魔法に引っかかるはずでは?」


「我らの墓を暴くのは誰だ・・・」

「我らの眠りを妨げるのは誰だ・・・」

「我らの棲み処を荒らすのは誰だ・・・」


「はっ、もしかして!こいつら普通に善属性のアンデッドのなんじゃないのか?」


「善属性のアンデッド?」


「ここがこいつらの墓。つまり家ならここに来る連中は侵入者だからな。こいつらが外に一切出ず、やって来た人間を自衛目的で倒してるだけならかってカルマ値とかプラスになって、善属性になるじゃねぇか」


「しかし、母さんが襲われているのは事実です」


「そうだな。どうやらアンデッドらしくガラさんから生命エネルギーを奪っているらしい。ここは俺が囮になって助ける事にしよう」


 俺はミイラ男達に近づいて行った。するとミイラたちはいっせいに俺の方を向いて。


「やだ。女がいい」

「おんな~~~おんな~~~」

「からだやわらか~~~」

「うああぁ!!!だ、だめだ・・。腕にも足にも力が入らない・・・・!!!」


 ミイラ男達はガラさんの鎧の隙間に手を突っ込み、胸やらお尻やらを触りまくる。もとい生命エネルギーを素肌から直接吸い上げていた。


「いや。気持ちわかるよ。俺も男より断然女だからな。うん。俺もミイラだったらお前らみたく男無視して女の子から生命力吸いまくるわ。気持ちすっげーわかるわ」


「なるほど。ミイラ男達の考えが手に取るようにわかるとはふるちんさんは頼りになりますね。母さんを助けるために何かいい作戦はありますか?」


「え?そういうのってお前が考えるんじゃないのかよ?」


「私は闇属性と光属性以外の魔法を扱う事ができます」


「闇属性。は、アンデッドだから効きそうにないなあ。光属性の、例えばターンアンデッドなら効果は抜群だな」


「でも私は使えません。この場にウエアス教団のレベル1くらいの全ステータスMAXの駆け出しプリーストさんでもいてくれればよかったのですが」


「なんかそいつ魔王討伐パーティにいそうだな」


「火属性魔法が使えますがこの状況では使えません。ミイラ男達は母さんの胸やお尻を触りながら完全に取り囲んだ状態です」


「ファイヤーボールなんぞ撃ちこんだらお前の母さんごと蒸発させかねないな」


「母さんスライムですからね。かと言って氷の魔法では意味がありません」


「ミイラごと氷の美女像のできあがりか。他に何か使えそうな魔法は?」


「大きな地震を起こす土属性魔法とか」


「却下。俺達全員洞窟にいるんだからみんな揃って生き埋めじゃんか」


「あと一応風属性の雷の魔法ですね」


「それならガラさんを殺さないようミイラ男だけを狙って攻撃できないかな?」


「やってみましょう」


 ももかんはサンダーボルトの魔法を唱えた。杖の先端から雷光がほとばしる。波打つ稲光は薄暗い洞窟内が真昼ような明るさになる。

 そして。


「んあはああはあっうっっあぁぁぁーーーーっ!!!!!」


 サンダーボルドはガラさんに直撃した。


「あ、しまった」


「おい」


 だが、それだけではなかった。


「あう~~~びりびり~~~」

「このおんな~~~おっぱい~~~おしり~~~びりりり~~~」

「びりびりどうが~~~」


 ガラさんの鎧の隙間に手を突っ込んで胸やお尻を弄っていたミイラ男達がその動きを止めた。


「あれ?どういうことだ?」


 しかししばらくして再び活動を再開し、ガラさんの胸やお尻を触り始める。


「ふひひひ~~~むね~~~」

「おしり~~~」

「うぁあうあぁ!!!いやぁ!!吸わないでぇ!!!」


「どうなってるんだ??」


「そうか!母さんはスライム人間です!!スライムは体のほとんどが水分!!水は電気を通す!!!」


「なに!!?水は電気を通す?それは本当なのかももかん?」


「はい!!以前静電気チーターという方に教えて頂きました!!彼は下敷きをわきでこすって静電気起こし、それで脚を水につけた相手を感電死させたのです!!!

だから水を電気を通すのです!!!」


「相手が感電死するくらいの静電気を体に貯め込んでいたのによく無事だったな!!静電気チーターは凄いぜっ!!!!」


「というわけでサンダーボルト!!」


「んあぁぁーーーっ!!!し、しびれるぅ~~~!!!!」

「んぁ~~~びうりびり~~~」

「サンダーボルド!!!」

「あうぅ~~~!!!からだがあつぅぃ~~!!!」

「このおんなぁ~~びりびり~~~~」


「よしももかん!このままガラさんが死なない程度にサンダーボルドだっ!!ミイラ男達が離れるまで電撃魔法を放ち続けるんだ!!!」

「了解しました!サンダーボルド!!!サンダーボルド!!!」

「いやぁああ~~~!!!全身が痺れるぅ~~~~!!!!」

「あう~~~びりびり~~~」


 ミイラ男達はガラさんから離れていく。


「今だ!」

「ファイヤーアロー!!!」


 放たれた炎の矢がミイラ男達を撃ちぬいていった。


「あぐぅ~~~」

「もみもみ~~~」

「やかましいわ」


 俺はミイラ男に胸やお尻や脚を触れながら、エネルギーを吸われまくっていたガラさんに駆け寄った。


「大丈夫ですか?」

「ハァハァ・・・・かなりあの怪物たちに魔力や体力を吸い取られてしまって・・・私はもう、駄目です・・・」


「く、確か荷物の中に日本のユンケルなんかよりも遥かに効きそうなこの世界のポーションがあったはずだ!それを使えば!!!」


「ああ!私もう我慢できないっ!!ふるちんさん失礼します!!!!」


 ずきゅうううううううううううううううううううううううううんん!!!!!


「ぷはぁ!!生き返るぅ~~~~」


 ガラさんは即座に体力気力が回復したようであった。

 そういえば、ガラさんは魔王マイルズが造った合成魔獣で。

 材料はスライムと。

 サキュバスとか言ってたな。

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