第16話 転生チーターと地元異世界人との戦い2

「その、ビキニアーマー着ているアンタが魔王が自分の欲望を満たす為に造った合成獣(キメラ)っこと?ガラ・プラキディアさん?」


「その通りよふるちん君」


 ビキニアーマーの女剣士。いや母騎士はガントレットで長い艶髪をかき上げながら言った。

 彼女はなぜこの下着みたいな鎧を身に着けているのか?それは自分と、何よりも愛する娘を護る為のなのだ。もしこのビキニアーマーを外せば魔物の一族として追い出されてしまうのだ。

 そして魔物の力を使えば彼女の豊満な肉体は瞬時に粉みじんになってしまうのだ!



「フフフ、さぁガラ・プラキディアよ。お前にはこのビキニアーマーを身に着けてもらうぞ・・・」


「おのれクロイソス!我が主、魔王マイルズ様の仇!!」


「いいのか?貴様の胎にはその愛しい、愛しいマイルズ様の子供がいるのだ。女として、いや一人の母として産みたくはないのか?」


「く、なんて卑劣なっ!!」


「だが私は騎士だ。お前が大人しく言う事を聞いてくれるのならば貴様をちゃんと人間として扱ってやろう。もちろん産まれてくる子供ともどもなっ!!」


「く、なんと卑劣な!だが私の体を自由にできても心までは自由にできないぞっ!!」



「ふるちんさん。どうして冷たい石壁にぴったりと体をくっつけているんですか?」


「いやももかん。そんな小さな事は気にしないでくれ」


「そうですか。私にはふるちんさんが母の身の上話を聞いて、思わず何かイヤらしい妄想をしてしまったふるちんさんがそのお粗末なグングニルの槍を縮めようと我慢している風に見えるのですが」


「わかってるならちょっとそっとしておいてくれ」


 そしてこっちの魔法使いの少女が娘のももかんということらしい。


「そ、それより。変わった名前じゃないか?ももかんだなんて?」


「やはりふるちんさんもそう思いますか?これには私の出生が深く関わっているのです」



 クロイソスは魔王マイルズを倒した。

 まぁ普通の勇者物語ならめでたしめでたしで終わりだろうが、彼はサルディスの国の王子である。

 平和になったらどうするか?

 王子として父である国王の政治の補佐をするのである。そこらへんが自由気ままな冒険者とは違う。

 その仕事の一つが例の魔法学科解体だったし、かつての共に旅をした冒険者仲間の再就職先の斡旋だった。ある者は城の兵士となったし、またある者は街の商工会に所属して石工職人などになった。

 そのような政務を続ける中で城に独りの商人が訪れた。


「ほう?君はニホン。という国からやってきたのか?」


「はい。今回は噂に名高いクロイソス王子に大変有益なお話をお持ち致しました」


 ニホンからやって来たという若い男は握り拳より少し大きいくらい円筒形の金属の物体を王子に見せた。


「これは中の食べ物がいつまでたっても腐らない魔法の箱でございます」


「ほう?しかし鉄の箱に入ったままでは食べられないのではないのか?」


「ご安心ください。この缶切りを使えば」


 ニホンジンは缶切りを使っていともたやすく缶詰を開けた。


「この缶詰を開けて中の食べ物を食べる事ができるのでございます」


「では、その缶詰めとやらをとりあえず十個。金貨百枚で買おう」


「王子様。缶詰だけでは無理です。この缶切りがなければ缶詰を食べる事はできませんよ」


「そうだな。ではとりあえず一週間後。その缶詰めと缶きりを百。いや千。いっそ一万用意できるか?」


「え?一週間で缶詰を一万個?!」


「何?ニホンジンの貴公は商人なのに商品を売らぬと申すか?」


「い、いえ!!借金してでも用意しますよ!!缶詰一万個!!!」


 ニホンジンは駆け足で城から出て行った。


「さて、と」


 クロイソス王子は一個金貨百枚で購入した缶詰を持って商工会ギルドに向かった。


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