第7話 魔王マイルズの復活
「じゃあ皆さん行ってきます」
ももかんは村山アニメーションのスタッフに軽く挨拶すると、魔法で異世界に通じる扉を出現させた。
「行ってらっしゃい」
「いってらー」
「行ってきます、てどこに行くんだ?」
「とりあえずちょっと魔王城まで」
俺の質問にももかんはこう答えた。
「そんなコンビニ行くような感覚で返事するなよ!」
「いえ。実はこれから行くのはふるちんさん。貴方が主人公として活躍する前の過去の世界なのです。まだ魔王マイルズは復活していません。このままでは貴方が異世界で活躍できないので魔王を復活させてきます」
「物語が始まらないからね」
「誰だっけ?ヒーローが活躍するには悪人と、被害者が必要だって言ったのは?」
「それを言ったのも悪人だった気がしますねー」
「ではとりあえず魔王マイルズ復活直前の魔王城にレッツゴー」
俺とももかんは扉を開けて異世界に旅立った。扉を開けた先は教会のような場所だった。
薄暗い室内。その奥には禍々しい石像。ではなく聖母マリア像が立っており。
ももかんはスマートフォンを取り出した。
「画麻さん聞こえますか?」
『はい。なんでしょうか?』
「魔王城地下の神殿。まだ完成してませんよ?」
『え?ちょっとまってください・・・』
電話口から紙をパラパラとめくる音が聞こえた。
「あ、本当だ。まだマリア像のまんまですね。来週までに邪神像用意しておきます」
「お願いします」
「おい。ひょっとしてこの神殿も」
「オタトモの学校内にある教会です。画麻さんの言うとおり後でマリア像は邪神像に変えておくので心配ありませんよ」
「愚かなる人間共よ。邪教の神殿によく来たな・・・」
聖母マリア像の陰から説得力のないセリフを吐く男が現れた。その人物は。
「近藤さん?」
「近藤ではない。魔王マイルズ様にお仕えする悪魔神官である」
「近藤さん改め悪魔神官さん。邪教の神殿に御用があって我々は参りました」
「なんだと?人間風情がよくも抜け抜けと」
「生き返らせてほしい人物がいるのですが」
「生き返らせてほしい人物だと?」
「こちらの魔王マイルズです」
ももかんはでっかい棺を置いた。
「なんで魔王がそこいらの冒険者みたいな復活の仕方すんだよっ!!!?」
「ほう?魔王マイルズ様の復活とな。よかろう。さすれば我が神殿に百九十八万六千四百八十八枚の寄付を」
「お前もさっくり引き受けんな!ていうか金取んのか!!ていうか魔王だぞ!??復活できるのかよっ!!??」
「水35L、炭素20㎏、アンモニア4L、石灰1.5㎏、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素で構成されているのが貴様ら人間だ。これらはそこいらの市場でそろえる事が可能だ」
「人体錬成!まさに禁忌ですね!!」
「我らは魔王軍だ。ホムンクルスの製造やゴーレムの開発。キメラの研究くらいできんでどうする。ならば死者の蘇生などできて当然」
「魔王マイルズ骸骨だったぞ!!!」
「それにしてはこの魔王城は人気。というか魔族気が少々物足りない気がしますが」
ももかんはこの世界の(?)魔法使いだ。この魔王城全体から何かを感じ取っているらしかった。
「魔王マイルズ様が勇者との戦いに敗れ、千年余り。復活の時は近い。だが、千年の時は我ら魔の者にとっても余りにも長すぎた。口ではマイルズ様に忠誠を誓っておっても、各地で勝手な行動を取る部族は多く、真に忠臣と呼べる者は一握り」
「ていうか魔王って1000年前に死んだんだろ?復活できるのか?」
「可能だ」
悪魔神官は即答した。
「この状態ですけど?」
ももかんは棺を開けた。中に入っていたのは。
骨が一本だけ。
「・・・可能だ」
「てめぇ!今ちょっとかんがえだろっ!!!」
「世界樹の葉。賢者の石。人間の商人どもを通じてそれらを買い漁れば成功率などいくらでも高められる。お前達に請求するのはその為の費用だ」
「魔王城にある、マイルズの遺産を取り崩せばいいんじゃないんですか?」
「・・・ほう。貴様人間にしては賢いではないか。その発想はなかった」
儀式の準備は整ったようだ。
水35L、炭素20㎏、アンモニア4L、石灰1.5㎏、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15。
当然ながら世界樹の葉。賢者の石。不死鳥の尾も忘れずに用意してある。
「さて、始めよう。祈るがよい。邪悪なる神の名の下に!!」
聖母マリア像の前でなんてことをいいやがるこいつは。
「祈り、囁き、詠唱、念じろ!!」
デジューンン!!
噴煙が棺から噴き出した。そして棺の蓋が開かれる。
「おお!ついに魔王マイルズ様が・・・」
「じゃ、ねぇみてぇだぞ?」
ごそごそ。と這い出てきたのは目つきの悪い黒髪の男だ。
「う、ぐあ、お、私は一体・・・?!」
「?確か伝説では魔王マイルズ様は骸骨の魔術師のはずでは?」
「いや。私はマイルズ様の参謀を務めていた魔族トヨヒサルス。マイルズ様亡き後、魔軍を仕切っていたが、ちょっとした不注意からこのような事に」
「そうだったのですか。では魔王マイルズ様は何処に?」
「そこの邪神像が持っている水晶玉こそが・・・。あれ?なんだこの石像は?」
その時、悪魔神官の服からスマフォが鳴る音がした。悪魔神官はスマフォを取り出す。
「はい。悪魔神官です。え?変わってくれ?」
悪魔神官はスマフォをトヨヒサルスに差し出した。
「なんだ?何かの魔法の道具か?」
女の声が聞こえる。
『ごめんなさい。来週までには邪神像用意しておきます。水晶玉を持たせればいいんですね?』
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