第4話 現実チート
「ふるちんさん。貴方には現実チートというものをして貰います」
「現実チート?ああ。日本で塩や砂糖を買って異世界に売って儲けるんだろ?なろうテンプレだな。知ってるよ」
「違いますよ。馬鹿じゃないですか」
ももかんは俺を罵倒した。
「まずふるちんさん。ここがどこだかわかりますか?」
「え?異世界・・・じゃあないな。日本?」
「の、どこだかわかりますか?」
「どこですか?」
「そんなことくらいすぐに察してくださいよ馬鹿じゃないですか。さっきアニメ制作スタッフだって全員自己紹介したじゃないですか?」
「じゃあここはアニメ制作会社なんだな?」
「そうです。ここは村山アニメーションという埼玉と茨城県の県境にあるアニメ会社です。東京まで電車で一時間の場所に会社の入ったビルはあります。この村山アニメーションこそが現実チートなのです」
「ど、どういうことなんだ?!偏差値10しかない、モンスターと言えばドラゴンとオークとゴブリンとスライムしか知らないなろう読者にもわかるように説明してくれよ!!出ないとここで読者に読むのを切られてしまうぞ!!!」
「どうやら異世界で金貨を100枚テーブルに並べて計算が得意な事を自慢する方々に現実チートの凄さを教えねばなりませんね。ここはアニメ制作会社です。アニメを制作するのには多くの人の協力が必要です」
「それは知っている」
「だから茨城県と埼玉県の県境に会社を建てたのです。なぜならば東京から離れる程、東北青森などの地方の田舎に行くほど、物価は下がり、会社を入れる建物の家賃は下がり、そして何よりも従業員に支払うべき最低賃金が下がっていくのです!!!」
「なんという凄いチートだっ!!!こんなチートは異世界ではできないっ!!!!・・・だがちょっと待って欲しい。東京から離れれば離れる程従業員に払う給料が下がるのであれば、いっそ沖縄にでも会社を建てればよいのではないか?」
「ふ、どうやらわからないようですね?アニメはTVで放送するのも。TVで放送してこそのTVアニメ。その為にはTV局にVTRを届けねばならない。従って電車で一時間で配送可能という距離が限界なのです。これ以上離れると台風や大雪などで電車や車が渋滞した時にTV局にアニメの入ったテープを渡せなくなってしまうのです!!!」
「な、なんていう事だ!!そ、そんなところまで計算していたなんて!!!」
「どうやら理解頂けたようですね。これが現実チートという奴です!!!さて、現実チートができるふるちんさんは異世界オナニーする連中とは一線を駕す存在となって頂きます」
「異世界オナニーってなんだよっ!!!?」
「なろう小説の主人公達の大半はその多くは異世界オナニーをする為に異世界に行くのです。異世界の人々を救おうとか、異世界の暮らしを良くしようであるとか、そのような志高い連中はほんの一握りなのです。例えば悪の魔法使いによって殺害された親友の仇を討つため、ロボットの少年と共に深度二万メートルの迷宮に挑むモフモフケモミの少女がいたとします」
「ウェルカムアビスだな」
「彼女の前に現実世界の食べ物がなんでも出てくる魔法のテーブルクロスを置いておきましょう」
「ドラ○もんの道具にそんなのなかったか?」
*
「あ、モフフフケモミミが歩いてきましたね?」
「テーブルクロスの前で止まったな」
「乗っているのはインスタントラーメンです。しかもお湯が入った状態です」
「これならわざわざ危険を冒してモンスターを倒して食料を確保する必要もない。きっとモフモフケモミミも喜んで」
「ぺっぺっ。まずい」
「はきだしたああああああああああ!!!!」
「実はモフモフケモミミは長い迷宮生活で全身の細胞が変化し、普通の人間の食べ物は体が受け付けないのです。加工食品は特にです」
「そんな設定あったのかよ?!!」
「マジです。原作公式設定です」
*
「お次はケッテンクラートに乗って乏しい燃料と食料をやりくりしながら雪原を旅する少女です」
「少女極限旅行だな」
「可哀そうに。女の子は燃料と食料が尽きて死んでしまいました」
「あれの原作最終回そうなってるのかよ!!!酷いネタバレされたわ!!!」
「さて。どんな凄い転生チーター様が来てくださるのでしょうか?」
スタスタ・・・・。
スタタスタ・・・。
スタ・・・・。
「いやあ。スマートフォンを持った若者も両手剣を持った若者も彼らの後に続く大量のクローン人間達もみんな雪原で行倒れた少女を無視していきますね」
「どうして助けてあげないんだよ!!みんな凄いチート能力の持ち主なんだろっ!!?」
「知らないからですよ」
「はっ?」
「彼らは自称『全知全能』のチート能力の持ち主です。しかしその能力の活用方法はすべて彼らを産み出したなろう作家。その知能レベルにかかっています。即ち、そのなろう作家が雪原に倒れた少女を救うだけの知力を持っていない時点でこの少女はどれだけ多くのチートなろう主人公がいたところで救われることはないのです」
「なんということだ・・・。お前の力でなんとかならないのか?お前は魔法使い、賢者なのだろう?」
「いえいえ。私は愚者です。愚か者ですので。あっちの人間同士の戦争でカッターナイフみたいなポキポキ折れる剣を大量生産して悦に浸ってる賢者様にでもご相談されてください。あ、そう言えば侵略の巨人というマンガありましたよね?」
「ああ。そういえばそんなマンガあったな」
「原作最終決戦で、巨人を造ってる悪の帝国と戦ってるんです。人間同士の戦いなんですが、人間との戦いは剣よりも銃の方が便利だってていうんで、普通にヒロインがスナイパーライフル使ってますよ?」
*
「さて、異世界転生チーター達が異世界オナニーしている事を御理解していたところでふるちんさん。貴方には現実世界でオナニーする方法を伝授しましょう!!!」
「げ、現実世界でオナニーする方法だと!!!?それは一体!!!?」
「それはこれです!!!」
ももかんはテーブルの上にあるものを置いた。それは。
「クマ侍の無許可オナホです!!」
「なんでクマの方なんだよっ!!それ主人公の女の子の方にしろよっ!!!」
「そして人類の繁栄はしました、の無許可オナホですっ!!!」
「だからなんで主人公の女の子じゃないんだよっ!!それお供の小人だろっ!!!」
「しょうがないなぁ。デスティーアナザーから、アストルちゃん。これならいいでしょう?」
「いやそれも男っだろ?!!可愛いけどさ!!!」
「脅威のメガヒット!!アンリミテッドシコシコワークスデミヤ!!!売り切れ続出好評につき再販決定!!!」
「売れちゃったのかよっ!!!ちょっと欲しい気もするなっ!!」
「そして熱血のオーファンズ。右腕を止まるんじゃねぇ!!!」
「何やってるんだよ団長!!!」
「さぁこれなら貴方は間違いなくオナホ太郎と呼ばれるようになるのです!!!」
「なんでそんな酷い仇名をつけられなくちゃならないんだよっ!!!」
*
「ゲームバランスというものは絶対的なものです。たとえどんなチートなろう主人公様であっても優れたゲームバランスの前には勝つことはできないです」
「何を言っているんだ?チート能力でゲームバランスを無視して俺TUEEEするからチートなろう主人公なんじゃないか」
「では。まずはこれをご覧ください」
ももかんは400ページくらいある分厚い魔術書のような物を出した。
「なんだそれは?」
「これはクトゥルフ神話TRPGの基本ルールブックです」
「クトゥルフ?よく聞くな。どんなものなんだ?」
「ベーシックルルールとキャラクター作成方法。モンスターデータなどが主な内容ですね。ただ、基本ルールは作者のラブクラフトさんが設定した1920年代。つまり第一次大戦当時の人間達が異世界からの怪物と戦う事を想定した内容となっています」
「第一次大戦?」
「明治、大正時代ですから人間達は単発式拳銃や火縄銃で異世界の脅威と立ち向かわなくてはならないんですよ」
「それは大変そうだなぁ」
「なおクトルゥフ2020ではサブマシンガンを持った警察官が異世界からの敵と戦います。1ターン辺りのダメージを計算しますか?」
「異世界から来た皆さん逃げてええええ!!!!!」
「この素晴らしいゲームバランスのクトルゥフ世界になろう主人公を放り込んでみましょう」
*
「あばばば・・・でぇ、畑に砂糖をまくんだぁ。うひぃ?この土とってもおいひいい?これはあまいっていうあじだんなぁあ・・・??」
「おい。なんか涎垂らしながら土舐めてるぞあいつ?」
「どうやら知力が低すぎたようですね。知力が余りにも低いせいでスキル以前にあらゆる知能系技能判定に失敗しまくっているようです。これはもうキャラ作成からやり直した方がいいですよ」
「しかし、これはあくまでTRPGの話だろ?」
*
「こちらに骸骨魔王が主役のアニメがあります」
「ボーダーレールだな」
「そしてこちらが骸骨魔王の部下のメイドになります」
「ノーベラルだな」
「骸骨魔王のレベルは作者設定で100。メイドは60です」
「まぁ魔王最強物語だしな」
「しかしコインクリスタルコラボではメイドはSSR5になり、全員プレゼントの目玉キャラになりました」
「・・・・・えっと」
「『骸骨貰える!』じゃお客さんが喜ばないと判断したんです!現実サイドの企業側が!!そして『この子ヒロインぽいし、レア度あげて全員配布にしよう』って判断したんです!現実サイドの企業側が!!」
「これが!これが!!現実チートというものなのかっ!!!正しいゲームバランスという奴なのかっ!!!!」
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