第9話 想い
花畑があった。地平線の彼方まで花が咲き乱れている。
少女が一人遊んでいる。他に人は――
(あれ。私、何でここにいるんだろう...)
白い髪で白い目の女の人が一人。
(あれ、ここ前にも来たことある?いや、そんなこと、え?いや、私は誰?何か、大切なことを忘れているような...?)
「何か」は焦っていた。
早く、早くあの少女を殺さなければ!
そうしなければ、「あいつ」が来る!
「何か」は、記憶を失っていた。
しかし、「何か」もとい「魔王」は、未来で付けられた恐怖を体が覚えていた。早くこの場から立ち去りたい。しかし、それはあの少女を殺してからだ!
そして、「魔王」は見つけた。
花畑で無邪気に遊ぶ少女の姿を。
自分が殺さなければいけない相手のことを。
「何か」は剣を構えて少女に突き刺そうとした。
そして、白い髪で白い目の女は見た。
少女の身に剣が迫るのを。
考える暇もなかった。気付いた時には走り出していた。
この少女だけは、守らないといけないと何故か思ったから。
「危ない!」
少女はただぼうっと見ていた。
自分の目の前に迫ってくる刃を。
その先にある自分の「死」を。
少女は、死ぬということに対して何も感じなかった。
――ただ、誰かの声が聞こえた。
私は、必死で少女と刃の間に飛び込んだ。
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