第10話 過去

私は思い出した。自分に自分で魔法をかけていたことを。

すべて思い出した。自分が何故、ここにいるのかを。

そして、納得した。そういうことだったのかと。


刃は止まっていた。私を貫いて。


「ああああぁぁぁぁ!まただ!またお前に邪魔された!何故だ!何故邪魔をする!」

「魔王」は叫ぶ。

「...あいにく、この子には死んでもらう訳にはいかないんでね。」

「すべてを捨てた。記憶さえも失った!やっとここまで来たんだ、もう邪魔しないでくれ!」

「魔王」はそれでも少女を殺そうとして、更に剣を深く突き刺そうとしている。「分かっている。分かっているよ...」

私は、深く頷いた。

私が両手の手のひらを前に向けて重ねて呪文を唱えると、手のひらに複雑な魔方陣が浮かび上がる。

「だからもう、楽になれ。」

そう言った私の声は、自分でも驚くほど冷たかった。

私の手のひらに、膨大な魔力が集まっていくのがわかる。

「それは、炎の禁呪...そんなものを使うと、お前も死ぬぞ」

「...別にいいさ。お前を殺せるのならな。じゃあな、サヨナラだ。もっとも、私ももうすぐだろうがな」

私の手のひらから真っ赤な炎が吹き出す。

「魔王」は、燃やし尽くされた。灰になっても。


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