第8話 禁呪

「バカか、君は。得られる恩恵は大きいがその代償として自らの命を削る禁呪、ましてやその中でも特に代償の大きい時の禁呪なんて、下手したら死ぬぞ。」

私はこいつをここで仕留めておきたかったので、やんわりと止めるように言った。一応、警告も兼ねて。

「ひひっ、それがなぁ、自らの命を削らなくてもいい方法があるのさ。ただ、代償はもちろんある。」

私はその言葉に反応した。その禁呪を使えば、あの人を助けることが出来るかもしれない。

「ほう...殺す前に聞いてやろう。その方法とは?」

「ひひっ、簡単さぁ。自らの命の代わりに、自らの記憶を使うのさ。禁呪で傷ついた体は治癒するのが難しいが、記憶を失っただけなら時限式で発動する魔法を自分にかければいい。記憶を回復させる魔法をな。」

「...!まさか、いや、本当に!?」

その方法を使えば、あの人を助けられる!

「おっと、話しすぎだなぁ。時を越える時に、お前についての記憶も回復させるようにしなくちゃならねぇ。」

「おい!その方法は、私にも使えるのか?」

「お前はどうせ、時を越えても俺を殺そうとするだろ。だが、まぁ最後だから言っといてやる。時を越える禁呪は知ってるんだろ?なら、この話を聞いたお前はもう使えるさ。」

「なら、最後の質問だ。お前は何故、時を越える禁呪を使おうとする?」

「ひひっ、簡単なことさぁ。過去へ戻って、まだ弱かった頃のお前を殺すのさ。そうすれば、俺は最強だ。じゃあな、過去で会おうぜ!まあ、その頃にはもうお前を殺す直前だろうがな!アバヨ!」

そして、魔王は、時を越える禁呪を使った。

私には、禁呪を使うしかなかった。

私は、時を越える禁呪を使った。

自らの記憶と引き換えに。









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