第6話 十年後

あれから、十年が経った。あの時九歳だった私も、今は十九歳だ。

色々なことがあった。

あれから自分の村に戻った私は、まず血まみれの姿を見て驚かれた。

両親に色々聞かれたが、私はずっと黙ったままだった。

両親は、

「よほど言いたくないのだろう」

と思ったのか、ある時から聞いて来なくなった。

もしかすると、少し頭がおかしくなったと思ったのかもしれない。

私は、あの女の人が死ぬ所を見て、一つ心に決めたことがあった。

「強くなろう」

もし、私がもっと素早かったら、あの時剣を避けることもできただろう。

そうすれば、女の人が死ぬことも無かった。

もし、私が治癒の魔法を使えたら、あの時傷を癒すこともできただろう。

そうすれば、女の人が死ぬことも無かった。

でも、私は出来なかった。

すべて、私の弱さから生まれたんだ。

だから、強くなろう。

死にそうな人を救えるぐらい強く。

他の誰よりも強く。

馬鹿馬鹿しいと、無謀だと、笑われるかもしれないが、私は目指した。

即ち、「最強」を。

私は十ニ歳の誕生日の日、旅に出た。このままでは強くなれないと思ったから。

リュックサックに保存食やナイフ、銃など、旅に役立ちそうな物を詰め込んで。

移動手段は、徒歩だ。

辛いし、苦しかった。でも、もうやめようと思うたび、あの女の人の顔が鮮明に浮かび上がってきた。その顔は、自分勝手な解釈かもしれないが、私を応援してくれているように見えた。

ちょうど一年が過ぎた。旅に出て私の誕生日が初めて巡って来た日に、目当ての国に着いた。この大陸で、一番大きい王国だ。私は、ここで徹底的に勉強した。

体術は、この国で一番有名な人に習った。しかし、有名なだけで、私の求めていたものとは違った。私は、本を読んで自分なりに勉強した。鍛練は、一日も欠かさなかった。

私は、魔導書を貪るように読んだ。それで強くなれるのならと、禁書も躊躇せず

読んだ。何度も死にかけた。病院送りになったことも数えきれないくらいある。

でも、諦めなかった。諦められなかった。あの人の顔が目に浮かぶたび、心がズキリと痛んだ。しかし、同時にとても励みにもなった。

いつしか私はこう呼ばれるようになっていた。

「王国最強の魔導師」

と。

そして私は出会った。

「魔王」に。

私は十九歳になっていた。



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