第5話 別れ
炎がやっと勢いを無くした。
突然前の女の人が後ろに倒れてきた。
「わわっ!」
私はとっさに女の人を受け止めた。女の人から出た血で服が汚れたが、構っている暇は無い。
私はゆっくりと女の人を地面に下ろした。
女の人は静かに目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
もしかして、もう死んでるのかな?と、私が思った瞬間、突然大量の血を口から吐いた。
私は驚いて一歩下がったが、やっぱり心配して一歩近づいた。
「...大丈夫だ、まだ死なないよ。」
死んでいなかった。でも、私は、この女の人はもうすぐ死ぬんだろうな、と思った。
急に涙が出てきた。私は聞いた。
「あなたは、なぜ私を助けてくれたの?」
女の人は目を閉じたまま、フッと笑った。
「何故、か...うん、君がそこに居たからかな。あと、君が君だからだ。」
この女の人の言っている事は、私には理解出来なかった。
「私は、もうすぐ死ぬ。君には私の言っている事は分からないだろう。」
この、白い髪と白い目の女の人は言った。
「私の最後のお願いだ。君には、生きていて欲しい。精一杯生きて、幸せになって欲しい。」
そして、白い髪と白い目の少女は答えた。
「私、精一杯生きるよ。きっと、幸せになるよ。」
白い髪と白い目の女の人は、ニッコリと笑って、
「ありがとう。頑張って生きるんだよ、××××」
白い髪と白い目の女の人は、なぜか私の名前を知っていた。
そして、白い髪と白い目の女の人は、私の目の前で力尽きた。
私は、この願いを聞かないこともできた。でも、命を救ってもらったからだけじゃなくて、この願いは、なぜか聞かなくてはならないような気がした。
私は泣いた。わんわん泣いた。ずっと泣いた。多分、その時に一生分泣いたんだと思う。それから、私が泣くことは無かった。
この日、私は一つの過ちを犯した。
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