第3話 抗うもの

「何か」は、焦っていた。

早く、早くあの少女を殺さなければ!

そうしなければ、「あいつ」が来る!

「何か」は、記憶を失っていた。

「何か」が覚えているのはただ一つ。

あの少女を殺さなければいけない。

そうしなければ、自分が死ぬ。

あいつに殺される!

そして、「何か」は見つけた。

花畑で無邪気に遊ぶ少女の姿を。

自分が殺さなければいけない相手のことを。

「何か」は、剣を構えて少女に突き刺そうとした。


少女は、ただぼうっと見ていた。

自分の目の前に迫ってくる刃を。

その先にある自分の「死」を。

少女は、死ぬということに対して何も感じなかった。

――ただ、誰かの声が聞こえた。

刃が少女に突き刺さる寸前、誰かが少女と刃の間に割り込んだ。

それは、少女の死を認めないものだった。

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