第3話 ♂♀♂♀♂♀

今日子ママに出会った時、実はアタシは結構、ヤバイ状態だった。

だって、生まれてすぐに、おっぱいも碌に飲めないまま放り出されたんだよ!?

身体は冷え切って、お腹も空いて。

冗談でなく死ぬ寸前。


でも、数日もしたら、元気になった。

病院で治療もして、子猫用ミルクもお腹いっぱい飲んで、あったかいお部屋でぬくぬくして。


元気にスヤスヤ眠るアタシを前にして、正確にはアタシの股間を前にして、今日子ママは頭を抱えていた。


「う〜ん、やっぱりわからない…。」


ママは大学の教科書を開いていた。

‘子猫の雌雄鑑別’

開かれたページには、そう書いてある。


実はアタシ達、子猫は生まれてすぐに男の子か女の子か判断しにくい。


男の子にあるタマタマが、外側からハッキリわかるようになるまで、生まれてから日数がかかるんだよね。


でも、ママは獣医学生だもん。

大丈夫♪


と思ったら…。


「うん!よくわからないけど、なんか鳴き方が男の子っぽい気がする。まあいいや。男の子だ!そういう事にしよう。」


「ミー!ミー!ミー!(ちょっと待てー!)」


何⁉︎

その獣医学的根拠ゼロの決め方は⁉︎

そんなんじゃ、ママ留年しちゃうよ!

アタシは男の子じゃなくて…。


「男の子なら、男の子らしい名前を付けないと。」


だーかーらー!


「よし、お前はクウガだ。仮面ライダークウガ!カッコイイでしょ。」


「ミー!」


アタシは精一杯、抗議の声をあげたけど、わかってもらえなかった。


結局、アタシの性別がわかってもらえたのは、2週間くらいしてから。

いつまでも、タマタマが見えてこない事で、ようやく女の子だと気付いたママは、アタシを‘クウガ’から‘クウ’に改名したのだった。


偉大な先人は、なかなか名前を付けてもらえなかったみたいだけれど、アタシは‘クウ’としての人生(猫生?)が始まった。

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