第4話 ちい姉さんとのご対面
アタシは子猫のクウ。
今日子ママに拾われて、今日で2週間。
名前も決まって、これからママと2人の生活が始まるんだな~と思っていたんだけど。
実はママの住んでいるアパートは、2部屋あるみたいなんだけれど、奥のもう1部屋にアタシは足を踏み入れた事はなかった。
アタシを思案顔で見つめていた今日子ママが、いきなり話し始めた。
「いつまでも隠していても仕方ない。実はクウ。お前にはお姉ちゃんがいる。」
「ミー!(いきなり、そう来ますか!?)ミー!(お姉ちゃんって、誰ですか!?)」
「まあ、百聞は一見に如かずだ。とりあえず、会ってみろ。」
ママは開かずの間だった部屋の扉を開けた。
今までこの扉を開ける時は、アタシはケージの中に隔離されていて、中の様子は見られなかったの。
そこに立っていたのは、綺麗な三毛猫のお姉さんだった。
三毛猫のお姉さんは、近付いてきて、アタシのにおいをクンクン嗅いだ。
「ネズミか?」
「その反応、誰かさんと一緒なんだけど!」
「ネズミでなければ、何なんだ?」
「子猫!こう見えて、お姉さんと同じ猫なの!お姉さん、子猫も見た事ないの!?」
「見た事ないねぇ。私は初発情の前に、不妊手術されたから、子供は産んだ事ないし、完全室内飼いだったから、他所の子も見た事ないんだよ。まあ、実を言うとネズミも本物は見た事なくてね。てっきり、あのおもちゃの本物が現れたのかと。」
と、お姉さんが視線を向けた先には、ちょうど今のアタシと同じくらいの大きさのネズミのおもちゃ。
しかも、頭とれかけてるんだけど!?
三毛猫のお姉さんは、私ににじり寄ってくる。
今日子ママは黙って見てる。
お姉さん、前足を伸ばして、アタシの事をつんつん突っつく。
そのまあるいおめめは、母性本能のかけらもなくて、狩猟本能でギラギラ輝いていた。
「やめて~!アタシはネズミじゃない!」
ようやくママのストップが入った。
「そこまでだ。ちい。」
‘ちい’と呼ばれた三毛猫のお姉さんは、甘えた声を出して、ママにすり寄っていく。
「別にちいが可愛くなくなったわけじゃないの。ただ、この子もうちの子になったんだ。ちいには仲良くしてほしい。」
「ニャー。(わかったよ、今日子。)」
そうして、ちい姉さんがアタシに近付いてきて、お尻をなめてくれた。
「私も子猫の時に今日子に見つけてもらわなかったら、死んでいた猫だ。仲良くなろう。」
「ちい姉さんも?」
「私も子猫の時に捨てられたのさ。他の4兄弟と一緒に。でも、今日子に見つけてもらった時、まだ辛うじて息をしていたのは、私1匹だった。」
そう言われて、急に悲しくなった。
アタシにも兄弟はいた。
多分、別々の場所に捨てられたんだと思う。
もしかしたら、野垂れ死んでしまったかもしれない。
もう行方を辿る事もできない。
「お前も私も運が良いよ。少なくとも、今日子は悪い親じゃない。今日子がいる限り、もう寒い思いやひもじい思いはしなくて済むだろうさ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます