第2話 偶然と必然
アタシと今日子ママの出会いは、偶然であり、必然だった。
今日子ママは、当時、獣医系大学の6年生。
ママの住んでいた辺りは、同じ大学の学生達が住むアパート群だった。
獣医学科か動物資源科学科か生物生産環境学科に所属する動物関係専攻の学生達の巣窟。
ママはその中の獣医学科に所属する獣医の卵だった。
そして、こういう大学にはこういう大学らしいサークルがある。
その名は「犬部」。
行き場のない犬や猫、時にはウサギなんかを世話して、新しい飼い主を見つけるサークル。
このサークルは、かなり注目されていた。
ラジオや新聞の取材を受け、地元の市議会でも取り上げられ、後に小説化や漫画化もした。
となると、弊害も現れる。
犬部に何とかしてもらおうと、学生達の住むアパートの周りに、捨て犬捨て猫が、溢れてしまったわけ。
もうこうなると、犬部の部員だけでは、対応しきれない。
必然的に、犬部以外の学生も、見つけてしまったからには、捨て犬捨て猫の世話をする事になる。
だって、結局、皆、動物は好きだから。
悔しいけど、見捨てられないんだよね。
そのままアタシを犬部に押し付ける事も、出来なくはなかったけれど、ママはそれはしなかった。
犬部が行き場のない動物で、パンク寸前なのは知ってたし、犬部の創設者であるクラスメイトと、考え方が相入れなかったから。
犬部を創設した学生は、学内では動物実験反対派としても有名だった。
犬部の活動は、心の底で応援していたママだけど、動物実験に関しては、ママは容認派だった。
その辺りの意見の対立から、ママは個人的感情で、犬部に頼る気にはなれなかったんだよね。
こうして、私は今日子ママの‘次女’になった。
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