吾輩はニャンコである。

ひよく

第1話 今日子との出会い

「吾輩は猫である。名前はまだない。」


と、超偉大な先人は言った。


アタシも名前はまだない。

それもそのはず。

だって、アタシは生後1日目。

ようやくこの世界に顔を出して、ママのおっぱいを飲もうとした矢先、突然、ママから引き離されて、段ボール箱に入れられた。


時刻は深夜。

アタシを入れた段ボール箱は、とあるアパートの玄関前に、そっと置かれる。


まだ季節は秋とは言え、ここは青森。

夜の外の気温は、生まれて間もない子猫のアタシには厳しくって。


一生懸命、ミーミーミーミー鳴いていた。


鳴きながら、何とか一晩耐えきった。

そうして、翌朝。


「ミー…。(もうダメ…。)ミー…。(もう死ぬ…。)」


もうアタシはヘロヘロになっていた。

そんな際どい状態の時に、アパートの玄関の扉が開いた。


勢い良く開かれた扉に、アタシの入っていた段ボール箱は、アタシもろとも吹っ飛ばされた。


「なんだ~!?こんな所に、ゴミ置いたヤツ!」


吹っ飛んだ段ボールを、声の主が拾いにやって来た。

声の主は、ボサボサの長い髪をした若い女の人だった。


「ミー…。」


アタシは弱々しい声で助けを求めた。


「ネズミか?」


「ミー!(そんなわけあるかい!)」


「あぁ猫か。へその緒付きだ。」


「ミー…。(だって、昨日、生まれたんだもん。)」


「仕方ない。1限目はサボるとするか。」


これが、後にママとなる今日子とアタシの出会いだった。

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