やっと異世界ファンタジーらしいことを。
第017話『さつりくきょうかい 1』
「ふぇ?! ミレアちゃん見てくださいッ?! 私たちのランクが『F 』から『D』に昇格していますよ?!」
おてんば魔王様捜索クエストの報酬を貰うと同時に、魔法士カードの更新してみると見事に出世していた。
その経緯を聞くため、ギルドのお姉さんの顔を見ようとすると待ちわびたかのようににこやかでこちらを見る。
「ミレア様にティア様は魔王の配下であるレギオスを討伐したとレギオス本人から通達がありまして、それ相応の昇格をさせていただきました。それに加え、報酬金も」
「………ほう―――――って、『50,000,000ペリア』?!」
魔法カードないのクレジット金額の桁が変わっていた。それは俺だけではなくティアも同じで…………―――――ってことは、い、いいいいい一億ぅぅ?!
「レギオスもやさしいやつじゃな〜」
「あぁ!! お前の部下は偉いぞっ!! 俺の年収10年分のお金をくれるえらい人だっ!!」
「へ、へへ。 ほめめられてもこまるぞ?」
そりゃそうだ。褒めてるのお前じゃいしレギオスだし(ゲス)
ともあれ、これでティアに最高級の武器を買ってやれることは確定した。
いやぁ、レギオスと戦った時はどうなるかと思ったが、それなりの見返りが来るなら頑張り甲斐があったもんだ。
対して、大金を目にしたティアは優しく微笑み、
「少し、お父さんとお母さんに送らなきゃ」
親孝行を考えていたティア。まだ12歳なのに親孝行するなんて両親たちはきっと嬉し泣きするだろう。
俺なんて30過ぎてからやっと親にマンションの一室を買ってやったぐらいなのに。…………ま、住みづらいとか何とかですぐに売却されましたけど。
はぁ、母さんよ、俺は親孝行出来てましたか?
♢
ギルドを後にし、街中を三人で歩く。
徐々に仲間(主に幼女)が増え、異世界転生者らしく生きていていると我ながらに思う。
「…………っと。あったあった」
歩きを止め、剣のマークが特徴的な店の前に立つ。
「ぶきや? …………なるほど、てぃあはそうびを買うのか!!」
「は、はいっ! これで私も戦闘デビューですっ!!」
まだ気は早いと思うがな…………。
まぁやる気があることに越したことはないだろう。
早速店内へ入ると、鎧を来た人、またはごつい装備をした男たちが多くみられ、女の子が入るような店には到底思えない。………だがそこ入るのが我ら幼女たち。
いざ入ると、店内にいた男達の視線が刺さり始める。
それは『嫌悪の視線』『期待の視線』または『下心な視線』と色々な感情が混ざりあっているが、純粋無垢な少女・幼女たちは気にしない。 無邪気は最強である。
戦闘用斧売り場の目の前にくると早速物色を始める。
…………できるだけ軽量型で、攻撃に特化ではなく、防御特化の装備を―――――――
俺とティアが商品と睨み合っていると、無邪気に走り回っていたセルベリアがなんか持ってきたようだ。
「みろっ!! プリなんちゃらの魔法のステッキだそうじゃ!!」
いやいやいや。
……………それ、玩具だよな? 乾電池入れてスイッチ入れると効果音が出たり女の子が必殺技叫んだりするやつだよね??
オジサン、『二人は』世代の時しか知らないけど最近のは5人とか敵が味方になったりしているとか。
結果、
「元通りの場所に戻してきなさい」
「…………はぁーい」
セルベリアは不機嫌そうに返事をすると、鎧を着たおっさんに駆け寄り、そのオジサンのポケットにステッキを入れた。いや………返した?
―――――ごついおっさんの所有物だったらしいです。…………と。取り乱してはいかんっ。
すぐに物色作業に入ろうとすると、ティアがある一本の武器を手に取り目を輝かせていた。
「ん、欲しいやつがあったか…………ってそれ杖じゃん」
「い、いえっ。 これはれっきとした斧なんです」
………いや、見るからに大魔道士の杖って感じの武器だが――――――
「それは『精霊の玉峰』という戦闘用斧ですよ嬢ちゃんたち」
ティアとの会話の最中、店のオーナーが割って入り、そう断言した。
………先端に水色の水が入った水晶見たいのが付いており、打撃、斬撃武器には見えないのだが、
「先端にある水晶に魔力を送ると水晶周りに
オーナーの許可をもらい、試しにティアは水晶に魔力を流し込んでみる。―――――すると緑色の鎌鼬が無数に出現する。
「わぁ……… 綺麗ですっ!!」
いつも以上の笑を見せるティア。
…………相当気に入ったらしいな。
なら俺から言う事は何にもない。
「オーナー、これ買います。 いくら?」
「………そ、それがですね………?」
♢
『………金持ち幼女だ』
と言いたげな顔をしながら俺たちを見送ってくれるオーナー。たしかに20,000,000ペリアは少々高い気がしたが、ティアの喜ぶ顔の方がよっぽど価値がある。
因みに退屈そうにしていたセルベリアには300ペリアの薔薇柄ナイフを買ってやった。
「これでたくさんひとをぶっころしてやるー!!」
子供とはいえ、本物のナイフを持ちながら公衆の面前で叫ばないでほしい。…………一応キミ、魔王なんだから。やりかねないから。
「…………ん?」
夕日が沈みかけそうな時、俺はある店の張り紙に目が惹かれる。
そこに書かれているのは『快楽への追及』『浄土の道』『白十字の礼拝』と、様々な国の文化が集まったような宗教ポスターが貼られていた。
どの世界にもこういうものはあるんだ―――――――――
「―――――ッ」
張り紙から目を離すと、セルベリアは目つきを変え、遠くの路地裏を睨んでいた。
「ん? どうしたんだ、セルベリア。 お化けがいたか? それともハチ公を抱えた気持ち悪いレギオスがいたか?」
「な、なぜそこでレギオスが出てくるんだッ?! …………と、何ももんだいない。 早くやどにいくのじゃ」
そうして急かすように俺とティアの背中を押すセルベリアの手には先程買った薔薇柄のナイフは無くなっていた。
……全く、もう失くしたのかよ。
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