結─終結
19翽▶片道分の翼
外を目指したりはしない。アルクはつい先程そう言った。それは嘘ではなく紛れもない事実だ。ただし、それは“ 自分 ”の話であって、自分以外に外を目指させるという行為に関してはなんの疑問も躊躇もない。そんなもの、アルクにとっては一種の選択肢のひとつにすぎなくて。
デライアに外へ、星に近い所への憧れを囁けば、きっとその期待と煌めきに耐えられなくなって外を目指すだろうと思ってはいた。けれどもデライアが臆病なことを知っていたものだから、出ることができると確信させる為の材料をいくつか用意するのが必須だろうと。アルクはじっと、ずっと、長らくの間、ただ己の好奇心を満たす為だけに機会を探りながら待っていた。
「ここを真っ直ぐ行けばカコウジョの地下管理室に着く」
白の廊下、突き当たりの灰色の扉。
雄彦が着物の袖口から引っ張り出した鍵でその灰色は大口を横へと開けてみせ、奥の景色をさらけ出す。建物と建物を繋ぐ空中廊下なのだろうが、地下の天井から吊り下がったソレはかなりの長さがあって、廊下と言うよりかは回廊と呼ぶ方が相応しい気すらしてしまう。
雄彦はいたく地下街に詳しかった。先程までいた温室は、南地下管理棟の植物保管室というのが正式名称だったそうだが、デライアもクラウンもそんなことは覚え切れない。ただ、ニンゲンの遺したものは思っていたよりも、知っていたものよりも沢山あったということだけは漠然と解して。
淀みのない足取りで、広く白いリノリウムの道を行く雄彦の後を追った果て。縦に長い蜂の巣がいくつも連なって、その巣と巣とを細い橋が繋げているような空間は案内がなければ迷子になるに違いない。長らく人の通っていなかったろう空間だと言うのに、通った道にはホコリひとつなかった。思い返せば不自然極まりない光景に、ほんの少しの緊張感を覚える。
「……小鳥遊一族は、ただニンゲンの姓を継いだだけのドールの群れではない」
長い空中廊下を前に怯んだかのような顔色を見せたクラウンとデライアと、その隣でチカチカ、アースアイを瞬かせるアルクへ。気休めだろうか、雄彦が芯のある声のままに、誰へと言う訳でもなく口を開いた。
「鳥籠も、かつてはニンゲンとドールとが暮らしを営んでいた__」
社会性を持つ生き物が暮らすということは、その社会性を保つ為の施設がいくつも立ち並ぶということ。鳥籠という狭い世界の中において、ライフラインが、衛生面の問題を解決することが出来る術が絶たれることだけは絶対に避ける必要があった。
鳥籠でくらしを営むのに必要な技術や、施設を管理する術や頭脳を持つニンゲンと、それを教えられ授かったドール達。彼等は鳥籠中に必要不可欠な存在だった。たとえば、下水の処理施設を管理するニンゲンと、それを手伝うドール。たとえば、カコウジョから取り寄せた品を管理するニンゲンと、それを手伝うドール。ニンゲンとドールとが真に手を取り合って暮らしていたと呼べる世界が、かつてはこの鳥籠の中にあったのだ。
雄彦の一族は元々、鳥籠全体のエネルギーを管理するニンゲン達の補佐として動いていたドール達だったそう。
ある日、ニンゲンとドールとが暮らす鳥籠の中で、
赤い血がどこからともなく抜けていき、皆骸骨のようになってしまって、生きたまま干からびて死んでいく。体内で血を作れることには作れるのだが、作った端からどんどんと消えていってしまうから、妙に生き長らえて苦しむばかり。
健康なニンゲンの血を輸血すれば助かる見込みがあるのだとも言われたけれど、如何せん、ドール達には赤い血が流れていなかった。とうとう健康なニンゲンはいなくなって、骨と皮とが水分を失った亡骸ばかりがそこかしこに山を生み出して。
病によって一息にニンゲンがいなくなった鳥籠では、技術の継承が十分に行われていなかった。地表の、見慣れた風景を保つことが出来るニンゲンが、“ 暮らす ”ための建物を建てる技術を持ったニンゲンがいなくなって。野菜を、食材を自らの手で育てる技術を持ったニンゲンがいなくなって。残ったのは、中途半端な知識と技術を持った、心の弱いドール達。それから、うみだすことに苦労しなくたって、欲しいものを与えてくれるカコウジョ。
カコウジョがなくなれば全てが終わってしまうから、カコウジョを守る技術は、管理する技術だけはどうしても守り抜かなければならなかった。当時、カコウジョのことはケイサツが管理していたものだから、最後のニンゲンが、ケイサツカンが、相棒とまで呼んだドールに全てを託して、とうとういなくなる。カコウジョの全てを、鳥籠のエネルギーの根幹を知るドールは代々小鳥遊と名乗りひっそりとこの地に
「カコウジョを管理する術こそあれど、電源__黒い卵だったか、それに某は関与できない」
雄彦達は戦争用ドールではなかったから、ニンゲンの命令に逆らえない。「鳥籠を守れ」という数百年前のニンゲンから下された命令が、ドールからドールへ長らく継がれていたから。カコウジョの電源を、エネルギー源を取り外すなんてことはできなかった。
デライア達の、これより先の行動を読むことは容易だったがそれを助けることは難しい。せめてもの助力。
「行くといい」
薄暗い通路へ足を踏み出す。僅かな段差によろけたクラウンをアルクが支えて、通路を塞がぬようにとデライアが一歩前へ。
閉じられる扉の向こう、雄彦がらしくもなく俯きながら、灰色の向こうに消えていくのが目に付いた。
「た、高い」
「クラウン、大丈夫?」
「あぁ、あ……あぁ……」
心配されて泣き出してしまったクラウンをあやしながら、ほんのり急ぎの色を帯びた足で長い廻廊の上を往く。
石柱のように立ち並ぶ白い建物でできた町は、上から見たって無機質だった。
「あ、あの。本当にカコウジョに行くんですか?私達、永朽派の警邏隊なのに……」
「…………僕ね、本当は外で、星が見たかったの」
「それはたしかに、知って、ますけども……」
「今も変わらないんだ」
うまれた時からそうだった。物心着いた時からどうしてか、昼の空よりも星の瞬く夜空の方が好きだった。レヴォからドールも元々ニンゲンだったと聞いた時、ならばこの魂が欲しているとも言えるような強烈な星空への憧れは、はるか昔、ニンゲンだった頃の自分のものに違いないとひとり得心したのを思い返す。
警邏隊は永朽派を謳う組織だ。そんな組織に身を置きながら、今正に活革命派と似たような行動を起こしているデライアの背中を不安に満ちた視線で追う。先程自分を救ったヒーローのゆく道が、破滅か、救済か、クラウンからはわかりかねていた。
「おや、ご覧」
「アルクさん落ちちゃいますから戻ってくださいぃ……!!」
「アルクさん!?」
細い柱に__といってもアルクの痩躯よりかは頑丈そうであるが__手をかけて、空中廊下の下を覗くアルクの元へ。
おっかないことこの上ない、老獪なドールと震えるクラウンが並んで崖っぷちにその影を落とす様子に声が裏返ってしまったが、デライアも様子を伺おうと慎重にそちらへ身を乗り出す。
真下には水面。透き通るように青かった。
丸く切り取られた空の欠片が並んだように、淡く光を放つ青い水。わぁ、とデライアが感嘆の息を漏らしたらば、隣のアルクがふと翼をはためかせながら宣言を。
「デライアはこのまま真っ直ぐお行き。私は少し下を見てくるよ」
「えっ」
「アルクさん、正気ですか、飛ぶんですか?この高さからその羽で……」
「ふふ、私は飛べないわけじゃないんだよ」
「でも危ないんじゃ……」
慌てふためく2人を尻目に、容姿だけならば天使と呼称されても違和感の無いだろう色味と光を纏ったドールが、重力を忘れたかのように地面を蹴って飛び立った。アルクの翼は左右非対称だ。ひどく不安定な翼でこそあれど、小さな方の翼も宙で速度を落とすくらいなら問題ない。
だれより荘厳なしきたりだとかを気にしていそうなひとなのに、だれより奔放なその人が、ふわりふわりと、抜け落ちた天使のはねのように揺らめきながら降りていく。
「……どうする?」
「わ…………たし、は、アルクさんについて行ってみます」
「そっか……」
戸惑って、それからちらりと目線を上げて。クラウンにはまだ、外だとかを目指す勇気はなかった。一歩下がったクラウンが見ないでくださいね、と言ったものだから、慌てて首をひん曲げた。死角、クラウンの姿が蜃気楼のようにぼんやり揺らいで、それから小さな白い姿を取り戻す。見慣れた姿を象ってロウになったそのドールが、今一度デライアの視界を照らした。作り物の翼だった箇所だけが僅かに形を変えていて、平和を唄う鳩の翼のような、そこから真っ黒なカラスなんかは想像なんてできやしないほど、綺麗な白が映えていて。
「ライ……ぅ、デライア、さん」
「うん」
「星を見に行く時は、呼んでね」
「……! もちろん!」
にこり、ふわり、不器用にはにかんだロウが、白い足場を降りていく。青い水面の上に小さな白い点がキラキラ輝きながら消えていくのは、まだ青い空に浮かぶ白い月のようで綺麗だった。
アルクとロウが、白い翼をはためかせた彼等が、同じく白い、穢れのない廊下から飛び降りる様は、宗教画のようだったななんて思いながら1人で長い道を往く。
歩くのは得意だ。その隣に誰もいないのだって慣れている。みんな空を飛んでいたから、地を歩く自分の隣には誰かがいる方が珍しくって。
「……行こう」
ほんの少し淀んだ足元を激励するみたく、呼吸を止めて、再開して。遥かな星空を望む為。僅かな息継ぎだけを頼りに、鳥籠の真髄へ。一歩一歩、翼ではなく、この足で。
──────────────
マルクのアビリティの恩恵だろう、辺りはすっかり気を揉むような暗闇だと言うのに、そのドール達の表情はやたらはっきり捉えられる。
青い鎖がじゃらじゃらと音を立てて、支柱を探す蔦のように、獲物を探す蛇のように鎌首を擡げてあちらこちらへ揺れてみせるのも、おどろおどろしくって、たまらなかった。
「……探しに行く」
「無理に動いたらくっつけたばかりの脚が取れるぞ」
カーラが挟んだ小言に対してどういうことかとホルホルが咎めるような目線を送ったらば、辺りのドール達が視線をアルファルドの足元へ。ソレを追うように視線を落としたら、アルファルドの足元を黒い包帯が覆っていた。
裾のズタズタになったズボンは黒であったからわかりにくいけれども、風化した黄金が染みていて、パッと見でも何か大きい破損をしたのだろうことが伺える。まるで崩れ掛けの何かが崩れてしまわないよう、補強の役割を担うようにきつく巻かれた黒い包帯は、黄金のクリームと共に持たせておいた接着補助用に固い素材でできている。伸びの悪いそれは傷口を覆うのに向いていなかったが、取れた腕やら脚をくっつけるのには十分なはず。
「……脚がとれたのか?」
「とられたから作った」
「作った?材料はどうしたんだぞ」
脚を1本、否、両脚に黒い包帯が用いられているのを見る限り、恐らくなくしたのは両の脚。脚を2本丸々作り直せるような質量の黄金は持たせていないし、持っていくにしたってそんな大荷物、足でまといになりかねない。
「ラクリマとアイアンで、そこの梦猫のお腹の部分と俺の脚を作ったの」
メガネのレンズの向こう、黒い瞳が、ホルホルのそれとは似ても似つかない黒い色が鬱陶しげに細まる。薄い唇の奥からそんなことを、さも当然と言ってのけて、それから踵を返してしまった。アルファルド兄さん、と焦りの色を帯びた声のままに後を追った青玉の翼が、月のあかりをきらきら跳ね返しながら夜の道に消えていく。
鳥籠の中は凄惨な光景が広がっているし、右にあったはずの黄金は左にあって、目の前にあったはずの目標は誰かの腹に収まってしまった。ホルホルの恐れていた事態。
「ぼくも、ぼくもいく」
「マルクさん!」
咄嗟にマルクの腕を掴んだクラウディオの手が、バチンと甲高い音を立てながら跳ね除けられる。赤と金のオッドアイが憎々しげに歪んで、それから、まだ高い声のままに。
「さっき、外を見るのにティアが一緒じゃないと嫌だって、ディオ言ってたすっよね」
「それとこれとは話が違うッスよ、マルクさんは……」
「違わない!!違わないんすっ、ぼくだって外を見るのにリーダーが一緒じゃないと嫌なんすっよ!!」
ついさっき、スティアを馬鹿かと、高慢にすら聞こえるような言葉で励まして見せた声の主が、そう怒鳴って。目が見えないから、とうとうその姿を拝むことはなかったけれど。礼も言えなかったし、引き止めることだってできなかったけれど。軽い羽ばたきの音と共にすうっと気配が遠のいた。隣で気を落としているクラウディオの手を握る。もしクラウディオがいなくなってしまったら?だれかにとられてしまったら。自分はどうするだろうか。きっとおかしくなってしまう。
ぎゅうっと、互いの体温に縋るみたく手を握ったら、クラウディオも握り返してきた。この手が握り返されなくなったら、自分はどうなってしまうのだろうか。
「……ひとまず、ここを離れないか。足元が悪すぎる」
ヒールでうまいこと、足元にちった黄金の肉塊を避けながらカーラが歩き出した。アンドがむっと訝しげな表情をして見せたのに気が付いて、はぁと苦い溜息を。
「たしかに僕達は永朽派で、アンタ達は革命派だ。でもだからって時も場合も考えずに争いたいわけじゃない、こっちは戦意喪失、そっちは内部分裂……こんな状況で争おうなんて大馬鹿がいるのか?」
そっちがその気ならば僕が叩き伏せてやるが、とでも言うかのように、僅かに翼を開いて威圧しながらそう諭す。確かに、カーラの隣で微かに下唇を噛んでいる梦猫は酷い怪我が完全に塞がりきっていないし、ニアンも、ぼんやりと、ただ音のした方を気にするみたく視線をたまに動かすばかり。戦おうなんて雰囲気ではなかった。
「そうだな、賛成なんだぞ」
「でもこれ、何処に行くんっスか」
コツコツとヒールの音を連れて足早に前を行くカーラに続いて、大した宛もなくその裏をついていく。
足元に散らばった黄金をちらりとニアンが見下ろして、ぼそり。それからすぐ、興味なさげに前を。
この人が悪いことしたからいけないんだよね。
ニアンは“ いいこ ”だ。
従順な、それでいて愚直な、いいこ。よいこども。
ニアンにはとうとう別れの時までわからなかったが、ヴォルガはニアンに指示を出さずほっぽり出した事が一度もなかった。それはヴォルガが経験則で導き出したニアンの扱い方で、正しい取り扱い方法。ヴォルガがそうであったように、アルクあたりも察していたかもしれないが、ニアンは、指示がなければ何も出来ないドールだった。
稀にある。
心の発育途中に強いストレスを受けて、それに耐えられず、精神の退行だったり、ドールの“ 心 ”の機能が弱ってしまうことが。
アイアンが強烈なストレスに耐えかねて、己の思考を放棄してしまったのと同じように、ニアンもまた、ストレスに耐えかねて精神の成長、自己意思の尊重を放棄したドールだった。
永朽派には意志薄弱なドールが多いと誰かが言ったが、間違いはないだろうなと、きっと誰かが頷いた。
叱られるのが怖い。怒られるのも怖い。幼い頃に根を張ったトラウマは計り知れないほどに強烈で、それはニアンを永朽派の歯車とするのに十分な要素だった。革命を謳うドールが、あちらこちらで糾弾されているのを見ていた。革命は悪いこと。悪いことをしたら、叱られる。鳥籠を守るのは、いいこと。警邏隊として活動するのはいいこと。
ニアンは、強迫観念がうんだ赤子のようなドールだった。隠れるみたく前を行くドール達についてまわって、最後尾ですうっと目を細める。ついていけばいい。自分は何も考えなくたっていい。
逃げ道がない鳥籠の中、安寧の鳥を求めて壊れる鳥がいるみたく、逃げ場を求めて壊れてしまう鳥だって、あちらこちらに蔓延って。
ニアンがそうっと、僅かに残った自分の意志を払い落とすように、裾のホコリをはたいて落とした。
身だしなみを整えないのは、わるいこと。だからそうする、それだけ。
やがて足元に花を咲かせた黄金だったり、主をなくして散らばっていた羽だったりが見えなくなる。大通りも半ばの程まで来たのだが、景色が、最後に見た、見知ったものとは全く違う代物で。マルクが離れてしまって、すっかり視認能力の落ちた瞳で辺りを見回す。足元が悪いから場を変えようとしたはずのカーラが、頭を抱えて溜息を。
より一層足場が悪くなってしまった。陥没が起きた大通りは、あちらこちらに空いた大穴から地下街の様子が丸見えであるし、立ち並んでいた露店も巻き込まれて落ちたのだろう、はるか底の方に色味の違う闇が点々と交ざって落ちていた。燕の街と鵞鳥の街の方は建物に光が点っているが、工場地帯と大通りだけは幽霊も逃げるほどの闇がその空間を支配していた。
辺りを見回す。がらんとした、崩れ落ちた灰色が夜の闇をまとって深い藍色に姿を染めただけの街。鳥籠の三本の大通りには結構な数の猫がいたはずなのだが、いまや見る影もない。梦猫が長く、白い髪を揺らして小さく息をついた。
「ゴーストタウン、だね」
「ごーすと、たうん……?」
「荒廃して誰もいない街のことだ」
巨大な穴を避けて、通りの端へ。
春の夜は想像するよりも遥かに空気が冷えていて、僅かな風が指先の温度を奪いながら西に向かって吹いていた。吐いた息が白くなるほどでは無いものの、どうしたって膝の皿が冷えてしまって仕方がない。
「幽霊なんていないが……誰もいなくなったニンゲンの街は、人にとって幽霊みたいに恐ろしいものだったんだろう。だからそんな呼ばれ方なのかもしれない」
「幽霊なんていない?」
「いるわけないだろう?」
「…………あぁ、カラくんはいないと思ってるんだ……ふぅん」
「……梦猫?梦猫。それはどういう反応……」
「ニアくんそこ気を付けてね、はやく行こ」
「あ、うん……」
「おい、梦猫!梦猫!!」
梦猫はたまに、猫のようにぼうっとしていることがある。何も無い空間をしばらく眺めて、それから瞼を落とし何事も無かったかのように昼寝を再開する。そんなことがしばしばあった。仲間達が口を揃えて言う。梦猫は猫のよう。果たしてその猫のような虚空を見つめる姿が、本当に何かを見ているのか、何も見ていないのかは当人のみぞ知ることだ。
やがて暗い道の向こう、僅かな光が上下に揺れながらこちらに向かってやって来る。
懐中電灯を持ったドールがこちらに向かって駆け寄ってきているらしい、近付くにつれて小さな光は下を向いていき、チカチカ揺れていた光が大人しく首を俯かせながら地面ばかりを照らし始めた。ホルホル達の視界を急な明度の変化で焼かないように配慮したのだろう。光源の位置変化で若干姿がわかりにくいが、懐中電灯を持ったドールが明るい声音でこちらに接触を。
「おーい!避難してきたのか?」
「そういうわけではないッスけど……避難誘導ッスか?」
「おう、昼間から陥没が凄いから……中央に住んでたドール達はみんな燕の街とかの、壁際の……陥没しにくい所に避難してるんだ」
暗くてわかりにくかったが、恐らく明るめの茶色だろうふわふわとした髪がそのドールの動きに合わせて揺れる。
「こんなに暗いのに……ボランティアか?危険なんだぞ」
「俺は夜目が効くからさ。警邏隊とレーサーが協力して、避難誘導だったり行方不明者の捜索をしてるんだ。そうだ、俺はスズモ!」
名乗りを上げたドールに、近い個体から順繰り名乗り返していく。最も距離のあった個体のニアンも、きっと皆がそうしているからそうするのが正しいだろうと後に続いて。
真っ赤な瞳が暗闇でぼんやりと浮かび上がっていてよく目立つ。赤い瞳は綺麗だが、それと同じ程には圧が強くて畏怖されやすい。ばちり、前髪越しに目が合った梦猫がほんの少し肩を強ばらせたけれど、スズモの表情がすぐに柔らかく崩れたのを受けてそれも収まった。
「クラウ」
「どうかしたッスかティア」
「アルファルドさんと、マルクさんと、サファイアさんについて聞いてみてはどうでしょう」
避けるべき形で別れてしまったドール達。行く先で害を振るいかねない危うげな雰囲気であったから、なるべく早く合流して、諌めるでも宥めるでもなんでもいい、暴走、爆発寸前のドール達を何とかしたい。放っておけば、最悪自棄を起こして死んでしまうかもしれない。出来うる限り仲間内から死者を出さないように務めることこそ仲間の役目だ、そうか、と頷いたクラウディオが口を開きかけたらば、横でぼんやりと話を聞いていたアンドがぱっと手をあげて。
「ねぇ、なんか身長高い刀ぶら下げたドールと、メガネかけたドールと、身長低いゴーグル頭にかけた金髪のドール知らない?」
「今俺が言おうとしたんッスけど!」
「あは、たまにはね、バーって先に言ってみたかったんだよ」
「まぁいつも
こういう時に率先して言ってたっスもんね、なんて言おうとして、ラクリマが居ない事実がふと突き刺さった。アンドも平然としているように見えるが、よくよく見れば前髪のかかったまつ毛が微かに震えて、なんだか最後に別れた時よりも、心なしかやつれてしまったように伺える。
平気なように振舞ってこそいるが、クラウディオは普通の少年だった。無理もない。
急に黙りこくってしまったクラウディオにもう喋る気がないことを察したのか、二人の会話が終わるのを待っていたのだろうスズモがよく通る声で答えて見せた。
「3人とももう一個奥の穴の中に入ってったぞ、止めたんだけど……」
「止まらなかった、と」
「そう。案内しようか?でもマジで危ないからさ……」
「覚悟の上なんだぞ」
「そっか」
芯のある返答に僅かに口角を上げて頷く。こっちこっち、と懐中電灯を持っていない方の手で7体のドールを手招いて、それから足場の悪いところを上手く避けつつ西の方へ。
道すがら軽く情報交換をした。情報とは武器だ。上手く生き残るための命綱でもある。
木菟の森が壁際の僅かな範囲を残して全焼してしまったこと。啄木鳥の森にも飛び火することには飛び火したが、局所的な雨で守られたこと。燕の街、鵞鳥の街にほとんど全てのドールが集まっていること。地鳴りと共に陥没した穴はかなりの広範囲に及んでいて、あっちこっちで都市伝説とばかり思われていた地下街の姿を望むことができてしまうこと。今ホルホル達が目指しているものこそ一番大きな穴だという。なんでも、地下3層どころか4層までぶち抜いているらしく、誰も知らなかった地下水源の姿を拝めるまでに至ったらしい。
青く光る水面が遥か下の方に見えたのだとスズモが語った。
「避難したドール達は全員無事なんだぞ?」
「なんか凄い大人数を捌くのが上手なドールが来たから、食料配給とかは全然困ってないな!」
「大人数を……」
「スズモ殿ー!!ブランケットの領布が終わりましたぞ、完売でござる!!!いやー御礼御礼!!」
「あの人あの人!」
「声でっか」
軽く100メートルは離れているだろう距離の方、暗くてよく見えないほど遠い位置から大声を上げて駆け寄ってくるドールに、ついついクラウディオが肩をすくめる。
いっそ稲刈りシーズン直後の田んぼの方が歩きやすいのではと思えるほどに道の悪い中、高いヒールを鳴らしてやってきたそのドール。プリティーピンクのツインテールがほんのちょっぴり大袈裟に揺れて、その場の視線を独り占め。
「お!どちら様でござるか?拙者しがないオタクのぽっぽと申しますぞ!!以後お見知り置きを!!」
名乗ったぽっぽというドールには、ひとりひとり名前を教えることをしなかった。本人達が答える前に、一度で全員の名前を把握したのだろうスズモが紹介してしまったから。
ぽっぽが来たことで雰囲気の変わった空間に、アンドやクラウディオ、スティアや梦猫なんかは若干安堵の色を見せている。気を張ってばかりも辛いだろう、ようやっと肩の力をうまいこと抜けたというのならそれでいい。ホルホルがそんなドール達を見遣りながら、自身もそっと、適度に肩の力を抜いて。
ニアンはあまりのマシンガントークについていけていないのだろう、一度話を振られたものの、あう、と悶えた後にしゅんと肩を落として、それから話は聞くばかりの方に徹し出す。カーラは自然とツッコミ役であるから、常々舌を回しているようで若干疲弊すらしているように伺えた。
時折わからない単語が飛び出すぽっぽの言葉にも、柔らかく笑ってそれはなんて意味だ?だとか、手伝ってくれてありがとうだとか返すスズモはどこからどう見てもコミュニケーション能力のおばけだ。澱みなく、知り合って間もないだろう相手と言葉を交わす姿に、ニアンはほんのちょっぴり、羨ましさを覚えたような気がした。そんなことは到底ありえないが。
「さ!案内終了、ついたぞ!」
「ここが最後尾!の札を持ちたい気分でござる。というより何度見てもすごいでござるな~っ、ロマンたっぷりですぞ!」
危険もたっぷりでござるが、と付け加えたぽっぽのスカートが風に揺られてふわふわ揺れる。落ちないように覗いた眼下、真っ暗な闇に青が繁る腐った街と、白く輝く無機質な街とのその奥に、崩れた瓦礫が山を作って、瓦礫達の間を縫うように青い水が流れていた。
先程でたばかりの地下にとんぼ返りすることとなるが、こんな状況では致し方ない。飛べない__厳密に言うとなると決して飛べないわけではないのだが、長距離の垂直飛行は不得意と言わざるを得ないドールのニアンはカーラが抱えて連れていく。
「ホントに気を付けて行ってくれよ!なんか持ってくか?包帯巻き直したりは……」
「あ!そうだ、これ食べるといいでござるよ、腹が減っては戦ができぬと言いますからな!」
心配そうに、特にあからさま怪我まみれだった梦猫だとか、相当動いた後だろうことがわかるアンドだとかを見やって身振り手振りをして見せるスズモの誘いをアンドは丁重に断った。梦猫も断ろうとしたのだが、そちらはカーラが甘えておけと言ったから、かるく崩れ防止の包帯を取り換えて。
梦猫が包帯を変えている間に、ぽっぽの差し出したやたら量の多い栄養食と銘打たれたクッキーを受け取り、思い思いに包装を剥がしては口の中へ放り込む。
これで縁ができたでござるな!とニッコニコで、満面の笑みを浮かべたぽっぽもクッキーを嚥下した。
翼の状態を確認。傷を確認。ぽっぽから貰ったクッキーのおかげで体力もしばらく持ちそうだ。梦猫が皆とは数拍遅れてクッキーを数枚食べ終えれば、スズモとぽっぽが手を振った。
「本当に気を付けてな!」
「
「こっちが落ち着いたら俺も下に行方不明者とか居ないか見に行くから!」
手を振り返すことはしなかったけど、代わりに、深く頷いて。
トンと、地に足つかぬ感覚を恐れぬいきものたちが、軽くその身を自ら落として遥かな深みに姿を消した。
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リベルとシアヴィスペムを、警邏隊の本拠地である建物に入れる訳にもいかなかったから。ミュカレと檳榔子玉に2人を任せて、近くに空いた大穴の中の偵察も兼ねさせて、ひとりこうして地下3層の、永朽派本部にやって来た。
出入口の扉を押して開けば、ホコリひとつない白の廊下が現れる。かつん、こつん、コラールの、翼を持つドール達の中では軽い方の体重を支えるブーツのヒールが立てる音だけが響いていた。
左半分がスースーするうなじをそっと左手で撫ぜて、妙に凪いだ心のままに。奥へ。奥へ。まずはヴォルガの部屋だ、その後に秋を探して問い詰めよう。こちらを惑わしたその行動の理由だったり内容だったりによっては暴れてやってもいいに違いない。コラールの、質量が半分近く減ってしまった薄桃色の髪が、停滞感を感じさせない足取りに合わせて揺れていく。
今思い返してみれば、やっぱりこの組織は妙だった。新品ばかりが並んだ聖堂も、最早警邏隊のドールとして扱われているのか怪しい程に自由な規則も。けれどもそれを妙だと思うのも、きっと今日まで。ヴォルガの部屋の、指示された引き出しの中で、不可思議な全部に答え合わせがされるのだろう。
あの人を信じている。自分が信じたものに限りなく近かったから。あの人の信じたものを信じたいと思っている。自分も、自分が信じたものを信じて欲しかったから。
左右に並ぶ白い扉を数個飛ばして奥へ奥へ。入ってすぐからしばらくの扉は居住スペースに繋がるものではなく、備品などを入れておくための物置に近い部屋だから、用はない。皆が必ず通るような場所を見張りたがるように、階段だとか、入口だとかの近くにヴォルガが席やら部屋やらを取りたがるのは知っていた。だから、まだ名前の入っていない、けれども居住用のスペースだとわかるよう扉の横につけられたネームプレートを目印に、中でも一番手前の扉へ手をかける。
鍵はかかっていなかった。軽い音と手応えの後、そっと力をかけて、奥に扉を押し流す。荷物を移動させてきたばかりということもあってか、部屋の中は荷解きもまだ疎らなままで、生活感もほとんど無かった。
デスクの、右の引き出し。左は決して開けないで。
「開けないでって……」
開けないでと釘を打たれた左の棚は、とっくのとうに開いていた。
擦り切れた赤い手帳の端からはみ出る写真に、幼いヴォルガが笑っている。ヴォルガを抱き上げて笑うもう一体のドールのことは見たことがない。見てはいけないものを図らずして見てしまったような気がしたから、そっとその棚を押し戻しておいた。
右手を右の引き出しにかけて、一息にこちらへ引き寄せる。
パンパンに膨らんだ封筒が1枚あった。順繰りに開く。読む。一番上に自分の名前を見つけてしまって、嬉しいような、恥ずかしいような心持ちのままに指先で紙をめくって。
「何してるんですか」
何枚も何枚も、封筒の中に封筒が、紙が、最初は数枚だけのつもりだったのだろうソレが積もりに積もってできたもの。宛先は様々で、知った名前があったり、知らない名前が混ざっていたり。
自分宛のものの中身を読んでいたら、背後から若くて低い声。秋の声はヴォルガのものよりも低くって、女々しい見た目とはそぐわないものだった。
「……そっちこそ何しに来たの」
「それ、くれませんか」
コラール達の言葉を無視なんてしたこと無いはずの秋が、笑みも忘れて手を伸ばす。いつでもぴんと、シワひとつなく手入れのされたシャツが着崩されたところなんて見たこと無かった。まくられた裾から伸びる、ほんの少し血色が悪い無骨な手が、コラールを責めるように宙で伸ばされて。
「嘘つきにあげるわけないでしょ」
「嘘つきはボスの方です」
秋は臆病だ。物心ついた頃から、何かを好きだと思う気持ちよりも、何かを怖いと思う気持ちの方が強かった。怖いものから自分を守ってくれるから、警邏隊が好きだった。何かを怖がったとしても、怒らずに受け入れてくれた親鳥や、ヴォルガやユムグが好きだった。けれど、それ以上にきっと、自分が可愛かったんだろうと思う。
記憶操作のアビリティをもつ自分の前に現れた赤い鳥の、銀の嘴から逃げたくて。13年前、秋は自分の親鳥を売った。自分よりもすごいひと。自分よりもつよいひと。親鳥ならば何とかしてくれるだろうと、足りないおつむの中で漠然と思っていたのかもしれない。
秋を心配して、夜中に着の身着のまま巣を飛び出して、隠れてみている秋を探しに行こうとした親鳥を、赤い鳥が食い殺すのをただただ黙って、声を抑えて眺めていた。
親鳥を売った秋が、一度保育所に戻った後に出会って、怖いだとかなんだとかよりも、初めて好きだと思った双子。
二体揃って名も知らぬ尾羽の豪奢なドールの虜になっているのが気に入らなかったし、あの赤い鳥の所に通っていることが恐ろしくもあった。とられてしまう、初めて自分が何をしてでも欲しいと思ったものが。
巣箱の前に放られていたユムグのことを起こすとき、“ ヴォルガ ”と呼んでいたならきっと形は変わっていただろう。秋は、保育所で互いに笑いあっていた、秋を見てくれる“ ユムグ ”というドールが好きだったのであって、レーサーに、自身の夢を見ていた“ ヴォルガ ”のことは、寧ろ疎ましく思っていたから。
どっちかなんてどうでもよかった。
ユムグが側にいればいいと思っていたから、赤い鳥の元に残っていたヴォルガは見殺しにするつもりであったし、目が覚めたユムグの方からも、ヴォルガの時の記憶は無くした方が良いだろうなんて考えて。
けれど、事態は秋が思っていた以上に深刻だったから、目が覚めたユムグは忘れてしまった片割れを探して暴れ狂ってばかりで、秋のことなんて微塵も見てはいない。昔よりかは落ち着いたと思うけれども、やっぱり秋は、ユムグの一番なんかにはなれなかった。
忘れたはずなのに覚えているなんて、矛盾した状況が、秋からユムグを取り上げるならば。どこかに居る双子の片割れを探して暴れてしまうというのならば。
完全にいなかったことにしてしまえばいい。
「ボスが嘘をついているって、あの赤い人に教えたら、きっとあの人、ボスのこと何とかしてくれるでしょう。それに、オレも身を守れる。それは証拠になるんです」
かつて親鳥を売って身を守ったように。過去にヴォルガを売ってユムグを守ったように。
もう一度警邏隊のドール達を売って、自身とユムグを守るだけ。嘘つきひとり見殺しにして、自分の世界を守る為。それの、何が悪いの。
さも当然と言わんばかりの、オータムイエローの瞳。
「お前が何したいのか、何を思ってそんなこと言い出してるのかこれっぽっちもわかんないんだけど……いいこと教えてやるからよく聞きなよ」
紙の束をぎゅっと握る。細い指に力が籠って、淡く色づいていたはずの指先が白い色を帯びていた。
「ヴォルガさんは嘘つきじゃないから」
自分宛の手紙の、最後の一文。
流麗なブルーブラックの文字が紡いだ、たった4つの文字すら嘘だなんて言う口は、上から縫い付けて黙らせよう。
「青玉、とっても大きくなりましたね!」
「あはは、ユムグ兄さん程じゃないけどもね」
「いや十分ですよ。ねぇ、メガネのお兄さん!」
包帯に染みる青い水が、足裏を冷やして仕方ない。
地下へ続く縦穴付近で、下から上がってきたユムグとばったり顔を突き合わせたらば、そのままこうしてついてきている。最初はヴォルガが出てきたのかと思って、アルファルドも青玉も身構えた。が、幼さなんて消え去ってしまったはずの青玉を見て、大声でその名を叫んだドールは、よくよく見たらヴォルガではなくて。
青玉にしつこく構い、アルファルドを突っつき回す自由人。青玉は慣れているかのように、しつこさなんて昔から思い知っているとでも言うかのように慣れた様子で相手していた。なんでも、幼い頃は雄彦繋がりで一緒にいたこともあったらしい。
半ば乱心状態で、酷く気が立っていたはずのアルファルドの気分が、妙に静かに凪いでいく。不思議とユムグが側にいると落ち着いた。それはユムグも同じらしくて、普段はめちゃくちゃなのだと言う口調も、落ち着いているのか、この時ばかりはちょっと元気強めな標準語、といった程度。
「ねぇ、本当に見たの、緑に黒と赤のドールと、灰色に白と黒のドール」
「見ましたよ!!もっと緑のドールと、白くて小さいドールと、黒髪のドールと一緒にいました。もっと奥です!」
「早く案内して」
「アルファルド兄さん……」
ユムグが側に来ると落ち着いた。けれどもそれは気休め程度。未だにぎらぎら燻る熱を、できれば早々に何とかしたい。
その為にも、はやく、ルァンかシリルを。
ちゃぷ、ぢゃぷ、浅い水の上を行く。
真っ青な、サラサラした粘土のような足場を踏みしめて、広大な、淡くて青い道を往く。
「……なんか揺れてません?」
「上だ」
足を止めたユムグと、青玉とに合わせて踏みとどまる。ユムグがどうかは知らないが、青玉が足を止めたと言うならそれに合わせるが吉だろう。
地ならしと共に落ちる天井。聖なる歌が、地下空間で大きく震えて、反響して、増幅されて、そうして白い街の一角を青い水面に連れてきた。
アビリティで3層の一部を破壊したのだろうコラールが、天上を突き破って4層に降りてくる。降ってきた硬い白に紛れながら、優雅に、それでいて暴虐的に降りてきたそのドールは、天使と呼ぶに相応しい容貌で。
震えた空気に、水面に広がった波紋に、淡い水色の羽が飛び散った。コラールにとっては自分自身と、自分の信じたものこそが、絶対的に正しいものだ。愛した鳥籠と共に朽ちることこそ正しい。愛したドールが愛するものこそ正しい。それを邪魔する物も、否定するものも、コラールの世界にはいらないから。戦う術を持たないような秋相手にだって、遠慮なんてしなかった。
火蓋が落ちるように、街と、ドールが落ちてくる。
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Parasite Of Paradise
19翽─片道分の翼
(2022/04/23_______15:00)
修正更新
(2022/09/29_______22:00)
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