2-3
どれだけの弾丸を無駄にして、どれだけの的を無駄にして、どれだけの時間を浪費したのか。床に転がる黄金色の薬莢が、そのすべてを物語っていた。
シューティングレンジの内外を埋め尽くす黄金色の絨毯。それは蛍光灯の光を浴びながら、右へ左と揺れ動いていた。僕が一発撃てば、その刺激に応じてクルンッと動く。そして硝煙の匂いが立ち上り始めたころ、彼らは新たな仲間を迎え、ひっそりとその動きを止める。まるで
何個目のマガジンを撃ち終え、いくらの弾薬費をドブに捨てたころ。僕の腕はすっかり痺れてしまった。リコイルショックに打ちひしがれて、もう銃を握ることすらままならない。もはや僕の両手には、衝撃をいなす体力すら残されていなかった。
「まったく、まだウブね」
両手をブラブラと振って休む僕に、リンは言った。彼女の表情はどこか楽しげだった。
リンの手元には、それまで僕が撃ち抜いた的と、そして吸いさしのタバコがあった。彼女は右手にもっていたそれを口に
アルミ製の的には、文字列かパンチカードのように弾痕が穿たれている。初めはまさにてんでバラバラだったが、最後のほうは(僕にしては)比較的
だが、彼女に言わせればまだまだのようだ。
「とりあえずは及第点としておくわ。でも、まだこれからね。さっきも言ったけど、キミには三日のあいだで実戦レベルにまでなってもらう必要がある」
「どうして三日間なんですか?」
僕は腕をブラブラ。まだ痺れが残っている。
「それはキミに報告することではないわ。だって、まだキミが知るべきことではないから。ホウレンソウなんて弊社にはないって、それを肝に銘じておくことね」
「ただ下された命令を忠実にこなせって、そういうんですか?」
「そのとおり。だからキミは、三日のあいだに即戦力になればいいの。……新人を教育するつもりのない、ブラック企業だなんて言わないでよ。だって、キミのカラダにはそれが染み着いているはずなんだから。幻肢痛みたいに……。だからわたしは、キミがそれが思い出すまで、徹底的にキミをイジメぬく……。いいわね?」
同意を求めるように、リンは小首を傾げた。タバコをひと吸い。それから携帯灰皿を取り出して、ねじ込んだ。
僕は息をあえがせながら、何とか相づちをうつ。
「よろしい。それでは、第二段階まで移りましょう。時間は待ってくれないわ」
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