時空眼
「撤退する、優お姉さま?」
月読波奈は高層ビルから神沢優のそばに瞬間移動してきた。
時空間を入れ替えたのだ。
もぐら男と呼ばれていた
とはいえ、無限の力をもつ訳ではなく、彼女の体力、気力次第である。
「いいえ、あなたの力で
「例えば?」
「月とか」
「了解!」
といったとたんに、
「また、戻ってくるでしょうけど」
神沢優は月を見上げながらこれが時間稼ぎに過ぎないことを分かっていた。
†
「何かの呪いかもしれないわ」
神沢優からそんな言葉が漏れる。
そこは新宿の地下にある公安警察の秘密拠点である。
椅子に座っているが、目の前には秋月玲奈がベットに横たわっている。
眠っているが、身体に無数にある切り傷が痛々しい。
「うーん、波奈には分からないけど、なんか、ただの不死身ではないよね」
月読波奈は分からないなりになかなか勘がいい。
「そう。不死の生物ではあるんだろうけど、再生速度が速すぎるし、何かの呪い、<場の力>のようなものを感じる」
神沢優は思考していくうちに確信を深めていった。
こんな時、そっち方面の専門家、道術士の風守カオルがいないのが痛い。
京都で『雛流しの呪法事件』とやら関わっているらしい。
何でも、京都の各地で十数件もの事件が起こっていて、被害者の殺害現場にいずれも『流し雛』が発見されていた。
あっちもあっちで大変そうな話は聞いてるので連絡待ちである。
「とりあえず、カオルちゃん待ちってことで」
月読波奈もうなづく。
「人狼に襲われた風森怜という女の子がいるんだけど、波奈も一緒にいく?」
「うん、行ってみようか。何かわかるかもしれないし」
月読波奈と話していても埒が明かない。
異能力者であってもそっち方面は苦手である。
だが、妙に勘がいいので、彼女からヒントがつかめることもあるのだ。
「足で稼ぐか。何か手がかりでも掴めればねえ」
神沢優は心配そうに秋月玲奈に視線を落としてから立ち上がった。
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