黒虎
神沢勇が人狼と戦っていた同じ頃、秋月玲奈は
漆黒の人形の顔は虎であり、黒い体毛が全身を覆っていたが人のように直立していた。
玲奈は三メートルにも達する相手の巨躯に苦戦していた。
しかも、秋月流柔術の殺人技が全く効かない。
パワー不足もあるが、傷を治す再生速度が尋常ではなく、おそらく200キロは超えるかという体重で投げ技を打つのも一苦労である。
打撃技はほとんど封じられてる感じだし、関節技は跳ね返されるし、防御できるような軽い攻撃もなく、紙一重で相手の攻撃を回避してるつもりでも、玲奈の身体は全身打撲の満身創痍状態になっていた。
「玲奈ちゃん、もう逃げましょう。私が援護するからタイミングを合わせて!」
公安警察の神沢優はついに叫んだ。
だが、秋月玲奈は後退を繰り返しつつも逃げようとしなかった。
分かっている。
だが、一矢も報いずに秋月流の当主が逃げるわけにはいかなかった。
「もう少しです」
玲奈は後退しながらも、チャンスをうかがっていた。
神沢優も何かを察したのか、静かにうなづいている。
黒虎が踏み込んだ瞬間に、相手の懐に飛び込んだ。
低い姿勢から黒虎の
<
秋月流柔術の必殺技のひとつが炸裂する。
黒虎の頭部が自らの体重で砕け散る。
が、ここからが恐ろしいところなのだが、頭部があっという間に再生をはじめていた。
だが、その技はただのフェイントだった。
何故か、黒虎の身体は無数の刃のようなもので切り刻まれ、大量の血が噴き出し始めた。
秋月流柔術の裏奥義、<
公安警察の特別製の鋼の糸は空母上で戦闘機の機体を受け止めても切れない硬度があった。
黒虎が再生しても再生しても、無数の見えない鋼糸で無限に切り刻まれ続ける。
「神沢少佐、焼き払ってください」
「了解」
神沢優は火炎放射器で黒虎を焼き尽くしていった。
さすがの黒虎も焼き払われて塵になれば再生さえできないはずである。
が、塵が風に舞いながら霧となり、暗黒星雲のダークマターが渦巻きながら形を為していく。
およそ一分ほどで黒虎が再生した。
「嘘でしょう」
神沢優の目の前で復活した黒虎は見えないはずの鋼糸を引きちぎった。
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