再生
「……人間、待て」
神沢勇は肉片となった人狼を振り返った。
が、それはみるみると再生して、狼の形になっていった。
白銀の
「あらま、狼に退化?」
神沢勇は皮肉をいう。
どうやら、全身を破壊されれば人形には完全に戻れないのか、それとも狼の方が本来の姿なのかは分からなかった。
「人間にしてはなかなかやるな。だが、我を倒すことはできぬ」
負け惜しみのようにも聞こえるが、確かに不死身の人狼には違いない。
「まさか、不死身の狼と戦おうとは思わないわ。借りは返したから失礼するわ」
神沢勇は何事も無かったように振り返りもせず、歩き出す。
「分かった。今日は引き分けとしよう」
狼も追撃する力がないのか、負け惜しみなのか判断はつかなかったが追ってはこないらしい。
神沢勇は内心、ほっとして足早にその場を去った。
†
「というわけで、怜の仇は討ったからね」
神沢勇は翌日、怜の病室で自慢話をした。
実際、ほとんだ圧勝なのだから大したものなのだが、何となく腑に落ちないものが残っていた。
それが何なのかまでは分からなかったのだが。
「神沢先輩! 流石です! 天才です! やっぱり女子プロレスは最強ですね」
大分、怪我も回復してきた怜は大はしゃぎである。
「そうなると、怜も再戦しないといけないわね。今度は頑張るのよ」
神沢勇はまたとんでもないことを言い出す。
まあ、勇らしいといえば勇らしい。
「分かりました。すでに玲奈ちゃんに特訓を依頼してます。頑張ります」
「何ですって? どんな特訓なの?」
興味深げに訊いてくる。
「それは秘密ですよ。必殺技を教わるのです」
秘密と言いながら、ほとんどばらしてしまっている。
そこは怜らしい。
「まあ、頑張りなさい。玲奈にもよろしく伝えておくわ」
「了解です。でも、人狼が狼のままなら逆に戦いにくいですね。すばしっこそうだし」
「確かにねえ。そこは、ちゃんと練習すれば何とかなるわ。自分の力を信じなさい」
「そうですね。とりあえず、身体を治して。スクワットなんかはもうはじめてるんですが」
「その調子よ。あまり無理はしないように」
「はい」
神沢勇は天才プロレスラー
いわばサラブレッドなのだが、あまりに強過ぎて対戦相手を怪我させて以来、不遇の時を過ごした。
その時も秋月玲奈に助けられていた。
たぶん、今回も怜にとって救いの女神になるのは秋月玲奈だろうと思うが、その彼女の身に事件が起こっていることをその時の怜は知るはずもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます