第8話
毎週日曜日は楽しみにしている番組がある。怪談番組だ。これを欠かさず観る。そして幽霊についての知識を得る。
番組が始まった。視聴者からの恐怖体験をドラマで再現する番組だ。だから本物が写っているわけではない。でも柳地にとってそれは大した問題ではない。観ることに意味があるのだ。
最初の話はなかなか怖かった。隣にいる兄が、手で顔を覆った。そんなことするくらいなら観なければいいのに、いつもそう思う。
次の話は面白くない、と怪談に言うのも変だが、本当にそうだ。怖さを感じないというか、興味が持てない。この話を採用した番組スタッフは何考えてるんだか。
途中心霊写真の時間がある。そこに写るものは本物のはずだ。少なくとも自分はそう思う。いつか自分も、心霊写真を撮ってみたい。そんな衝動を、この番組を見るたびに感じる。
最後の話は、はっきり言って興味がない。いつも怖いというよりいい話で番組が閉めくくれられるからだ。でも次回予告があるので最後まで観る。来週は期待できそうな内容である。
観終われば、もう寝る時間だ。よく母親が、寝る前に怖い番組を観たら、夢に出てくると言うが、そんなことは一切ない。自分が怖い夢を見る時は、決まって風邪を引いている時だ。熱を出していると、怖い、というか変な夢を見るのだ。
そういうことを考えていると、また思い出す。あの夢だ。小1の冬、祖母の家で熱を出して寝込んだ時に見た夢。
怖い、というか変な夢。自分は倉庫の上にいて、地面には男の人がいる。地面の下に何かがいるらしい。その人はそれと戦っている。でも、その人が横になって転がると、ズボンの後ろポケットに入っていた財布を落としてしまう。するといきなりゲロを吐いて、死んでしまう。
よく思い出すのだが、自分でも本当に意味不明。でも、それがかえって恐怖を自分に与えてる。夢占いだとか、そんなところに持ち込んでも門前払いが目に見える。だから誰にも話したことがない。
その夢を思い出すと、次の日、まだ熱が下がらない時に見た夢を思い出し、さらに次の日の夢まで思い出す。記憶が芋づる式に出てくる。思い返せばきりがない。だから、あまり思い出さないようにしてはいる。でも、いつも頭の片隅にある。
ベッドに入って、明かりを消し、もう寝る準備を済ませた。明日からまた1週間が始まる。栞とはきっと、今日の怪談番組の話で盛り上がる。虫の話をしてもいいが、柳地としては栞にしかできない幽霊の話がしたい。そうだ、この前買った、怪談話の本を持って行こう。それを栞に貸してあげよう。それを受け取って、喜ぶ顔が目に浮かぶ。
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