中
あれから大体1か月、同窓会の当日を迎えた。ホテルのホールで立食形式のパーティ。皆久しぶりの再会を喜び和気藹々と話をしてたり、子供のころとのギャップに驚いたりしている。身長順で先頭だったのに今では190近くまで背が伸びた奴、すでに一児の母になっている奴。たった数年の間でみんなよく成長したものだ。岩井もやはり何かしら成長しているのだろうか?そうやってあたりを見回していると早速岩井をみつけた。
「よう岩井、久しぶり」
「お、ケンか」
岩井は相変わらずだった。身長も顔つきも変わらず子持ちでもない。変わらな過ぎて恐ろしいくらいだ。
「岩井は何も変わってないな。なんか安心したよ。」
「失礼な奴だな、身長は1㎝伸びたぞ。というかお前も変わってないよ、強いて言えば太ったか?」
「3キロ太った」
他愛もない話を続ける。
「そういえばケンは高校どこ行ったんだ?中学別々だったからなー。」
「俺は高専に進んだよ。先月卒業した。」
「そかそか、俺も先月卒業したよ。短大だったから。」
気を置かない会話はいいものだ、言葉がすらすらと出てくる。時間も忘れて話してしまう。パーティも終わりを迎える頃、タイムカプセルの話を出してみた。
「そういえばタイムカプセルを埋めたの、岩井は覚えてるか?」
「覚えてるよ、
「このパーティが終わったら取りに行かないか?俺も中身を忘れてしまったから気になるんだよ。」
「いいよ、行こう。」
同窓会のパーティが終わって夜の八時、各々アルコールも回り二次会に行く準備をしている者もいる。俺と岩井は二次会には行かずタイムカプセルの埋めてある蜂栄小学校に向かった。
「このモニュメント懐かしいなぁ、よく登って遊んだよね。」
「そんで先生に怒られた。」
「こんな登りやすい形に作る方が悪いよね。」
学校の入り口にある雲梯を捻じったようモニュメントを横目に静かに校庭へ向かう。百日紅は校庭を挟んでモニュメントの反対側に植えてある樹だ。表面がツルツルで登りづらくこの樹をどこまで登れるかが俺たちの間でブームだった。
「着いた、さすがにこの樹は変わんないね。」
「ああ」
「よし、いっちょ掘っちゃいますか、俺は体力無いから頼むよ?」
「小学生の頃に自分たちで埋めたんだ、たいして深くないさ。」
埋めた位置にアタリをつけてスコップで掘っていく。運が良かったのか一発で正しい場所を引き当てた。ゴワゴワしたクッキー缶を見つける。
「ふう、思ったよりも疲れずに済んだ。」
「それでも結構掘ったよ、もう1時間ぐらい経ってる。昔の俺達も頑張ったんだねぇ。」
「まあいいさ、それじゃ早速開けよう。」
雑に巻きつけられたラップと新聞紙を取り、クッキー缶のふたを開ける。中にはケースに入れられた金メダルが二つ、入っていた。第5回蜂栄小縄跳び大会最優秀賞と書かれている。
「うわぁ、超懐かしい。凄い奇麗に残ってるね。」
「二つ?」
岩井は何も不思議に思わずメダルを手に取って懐かしんでいる。しかし俺は懐かしく感じる前に金メダルが二つあることに違和感を感じた。
「なあ岩井、縄跳び大会の優勝者って一人だけじゃなかったか?」
「え、そうだっけ?」
「そうだよ、どれだけ難しい技をたくさん出来るかってルールだった。」
「でも間違いなく金メダルが二つあるよ」
「なんでだ?」
「なんでだろう?」
「「思い出せない…」」
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