第十話 仲間の魔法使いはかわいいもの好き

~マシュ視点~


マシュ「優はまだ帰ってこないのかな?」


既に扉の前についてから一時間近く経っている。そういえば勢いでここまで来てしまったが、彼の実力を知らない。仲間になることは受け入れてくれたが実は戦い初心者なのかも知れない。そうなれば右はともかく左の道に進んでしまったら確実に死ぬだろう。嫌がる素振りもなかったし断らなかったので大丈夫だと思ってしまったが実は断れなかっただけかもしれないし優しいから承諾してくれただけかもしれない。一時間来ないどころか扉も開かない、もしかしたら…と思ったと同時に体が動いていた。


マシュ「助けなきゃ!!」


急いで入り口まで戻り左側の通路に進んでいった。


マシュ(左側の敵強いんだよね…わたしでも勝てるかなぁ…。魔法使えないし)


出てきたのはツラー。つららのモンスターで物理攻撃がかなり高い。


マシュ「“ラビットダガー”」


マシュが投げた複数のナイフがうさぎが跳ねるかのように壁に跳ね返りツラーに向かって飛んでいく。ナイフは全てツラーに命中し一体も残らずに粉々に砕いた。

マシュは敵の攻撃をかわしつつ急いで進んでいった。


マシュ「えっ、これって」


マシュが見たのはマジックバットの群れ。普段はここまで多くはないのだがマジックバットの特性として警戒しているときや怒っているときは仲間を呼ぶと言う。


マシュ(もしかして、優はここで…)


マジックバットがマシュに気づくと一斉に魔法を放ってきた。


マシュ(うぅ、ドライマジックがあれば)


ドライマジックとは、魔法を軽減する魔法。これがあればマジックバットの質より量の魔法なら特にダメージをほとんど減らすことができる。

そして、マジックバットは円を描くように回り魔方陣を展開した。


マシュ「あっ、これってやばいかも」


大魔法を平凡レベルの魔力で使うには人数がいる。マジックバットが一匹一匹の魔力を一ヶ所に集めて魔方陣を展開させたとするならこれは少なくとも上級魔法である。


マシュ(だれか)


やられる!と思い目を閉じた、そのとき。


「クー!」


誰かが目の前に立った。そして右手を前に向け


「“リフレクト”!」


そう言うと魔法の壁が出現し、マジックバットの放った魔法をひとつ残らず反射し、一匹残らず撃破した。

助けてくれた聞き覚えのある声の主は


マシュ「優、なの?」


~優~


優輝「ふぅ、間に合った~」


マシュ「優?本当に優なの?」


優輝「はい、優さんですよ」ニコッ


マシュ「生きててよかったぁ~」

優輝「あれ?僕死んだことにされてました?」


マシュ「い、いやわたしはただ優の実力を知らなかったから戦闘とか初心者だったらどうしようって思っただけで死んだとは思ってないよ」


優輝「まあ、戦闘初心者ですけど生きてますよ~」


それを聞いてマシュは驚いた。彼は確かに戦闘初心者と言った、でもさっき使った魔法は恐らく“リフレクト”。あらゆる魔法を反射、相殺する魔法で幻とまでされるほどの最上級魔法だ。少なくとも戦闘初心者が使えるような魔法ではない。


マシュ「あなた本当に何者なの?」


優輝「はい?」


マシュ「いま使ったのはリフレクトでしょ?そんな最上級魔法を使えるのに戦闘初心者ってあり得ないと思うんだけど」


優輝「ああ、それはこの指輪、正確には召喚獣のおかげかな」


マシュ「召喚獣?それにその指輪って絆の指輪?それって幻のアイテムよね?なんでそんなの持っているの?」


優輝「ここの罠にかかっちゃってね、そこで見つけたんだ。で、はいっているのがカーバンクルのクー。魔法を反射する力があるんだって」


マシュ「そ、そうなのね」


この洞窟に罠なんてあったっけ?それにここはほぼ調べ尽くされているからそんな超レアアイテムが残っているはずはないんだけど


マシュ「ほ、本当に?」


優輝「うん、まさか落とし穴で5階まで落とされるとは思わなかったけど」


この洞窟に5階なんて存在しないはず、でも嘘をついてるようには見えない。殺意とかモンスターの気配もないので恐らく危険はない…だろう。


優輝「クー、でておいで」


そう言うと指輪から小動物みたいな召喚獣が出てきた。


マシュ「か、かわいい~」


そう言ってクーをぬいぐるみを扱うように頬をスリスリする。


優輝(警戒心はどうした。)


どうやらマシュの中では警戒よりもかわいいもののほうが勝つみたいだ。


優輝「あんまりやるとクーが嫌がるからさ、そのくらいにしてほしいかな」


マシュ「あっ、ごめんなさい。とりあえずは優のことを信用する。さっき助けてくれたし」


優輝「ありがとう」


マシュ「じゃあスイッチを押しに行きましょう、すぐそこだから」


優輝「了解」


そして、スイッチを押して扉まで何事もなく進んでいった。

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