第3話 小学生、小説を書く。



 机の中には、書き始めて、途中で書き飽きてしまった小説の卵が大量に入っていた。なにが言いたいのかさっぱりわからないものから、これつかえるかな、と期待するものまで。だいたいはA4のコピー用紙に鉛筆かボールペンで書かれていて、かっこつけるように字をゆがませている。私中二病だったなー、と思いながら大量の紙をゴミ袋に突っ込んでいく。そんな中にあった、題名不詳の一作がこれだ。




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 まえがき


 私がその子たちと初めて会ったのは、五月の半ばごろだっただろうか。

 小川の土手を歩いていた時だった。

 夕日に背を向けていた私は、のびてくる二つのかげの頭と足音から、だれかが近づいてきていることに気がついた。チャリン、チャリン、とかすかにすずの鳴る音も聞こえる。

 こんにちわ

 そう言われた。

 小学校四年生くらいに見られる、少女と少年だった。やや短めのかみをむすんだ赤いランドセルの女の子と、小納で黒いランドセルの男の子。その二人は私を追いこし、笑い声を利かせながら歩いて行った。その漏れてくる話声を聞くと、二人はいとこで同じがっうに通う同級生だということが分かった。二人は、ユツキとミツルと呼び合っていた。

 やがて二人は、小川の近くにある住たく街へ通じる道に入った。笑い声はまだ聞こえる。

 二人は仲がよさそうだった。………



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 長いんで、「まえがき」の部分だけのっけました。「まえがき」とかつけてることから察するに、太宰治の「人間失格」を読んだ前後あたりだと思います。小4か、小5かな。「小柄」の「柄」を「納」って書いてる。そこだけは、読んでて笑ってしまった。そのうち、題材に使うかもしれない。時間があれば、だけど。


 ……さあ、片付けを続けよう。机の中の残りもあと少し。


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