ドブコン(ドラゴンブックのコンテスト)が近付いて来たので、健康第一だぞと戒めとして。


 ぎゃあっと、火を付けられたかのように走っていた。


 毎日が懸命。


 悪く言えば必死。


 今から逃げるように、それは前ばかりを見ていた。


 昨日の事も思い出せなくなるぐらい、それは先へ、先へと足を。


 大人になって分かる。


 お前は必死過ぎだ。


 ちょっと気を抜くと、すぐムキになって、ころっと死んでしまえそうだ。


 飯は食べたか?


 ちゃんと寝たか?


 こら。昨日は晩飯を抜いただろう。


 ああ確かに、お陰で得たものは沢山だ。だけれどそれ以上に、お前の心身は傷んでいるのだ。


 構いやしないと走って来たし、そうでもしないと追い付けない事も、守れないものも沢山あったけれども、見ている方はハラハラする。


 いつかどっかに行っちゃいそうだねえ。


 のんびりした調子でだけれど、何だか寂しそうに言われたのを思い出した。


 しっかりしてるし、何でも出来るけれど、でも何だか、頼り無いよと。


 余り逸るなよ。私よ。


 時間と、能力を売っても、身と命は売ってはならんのだ。


 どこでもいいなら、こんな場所を選んでいない。


 どうでもいいなら、最初からここに立ってない。


 何を寝ぼけた事を言っているのだ。


 そこでないと満足出来ぬから、貴様はそこにいるのだろう。


 ……この若さを通り越し、鬼のようになっている激しさは、ばあさんになっても、変わらないのだろうか。


 ちょっとは大人になったのか、宥めようとする落ち着き始めたこの心は、今日も困って息を吐いている。


 程々にだぞ。程々に。


 自分に火傷しそうである。


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