ボカしてエッセイのネタにしてもよかったんですけれど、あっちには極力暗い事は書かないって決めてるんでこっちにします。


 絶望が足りねえ。


 おいお前。悪いが本当の悲しみってのは、そうは生易しいものじゃねえ。

 悪いが本気で人を憎むっていう事は、そんなに穏やかな程度じゃねえ。


 もっと居ても立っても、居られないものだ。


 多分お前は、今の所は少なくとも、私よりは穏やかな日々を過ごせていて、多分私よりは、きっと幸せなんだろうよ。だってお前の語る悲哀や憎悪には、今にも迫り来るような圧が無え。


 根性が足りねえな。お前、本気でいかった事があんのか? 頭に上った血に「どん」と、鈍い音で頭蓋骨の天井を叩かれた経験は無えのか? 今感情のままに飛び出したら、私は誰かを殺すんじゃないかって本気で自分にビビるぐらい、お前は憎悪に燃えた事が、多分無いんだろうな。


 ある私からはどうしても、全てが偽物臭く映っちまう。


 そういう、知らないで作られている、物語の中での憎悪や悲しみが。


 映画を観なくなった。テレビも観なくなった。


 だって温いのだ。どいつもこいつも。


 別に、不幸自慢がしたいって訳じゃ無いんだが。


 気付けば不思議な事に、こうして小説なんか書いていた。


 世にある憎悪が、余りに温く見えるようになってしまって。


 お前の死体が見たいと思ったぞ。


 お前の死体が見たいと思ったぞ。


 殺すだ死んじまえだ、そんな優しいものじゃない。


 ああお前のはらわたで、縄跳びがしてやりたい気分だったさ。


 私が至極真面目腐った奴で、本当によかったな。


 なんて、思った事があるなんて言った所で、何でかだーれも、信じちゃくれない。


 似合わないのだ、そうだ。


 私はそういう事を、考えない奴らしい。


 そんな訳あるかいと声を張り上げるが、それでもだ。


 ふうむ。


 不思議なもんさ。


 そのズレが何だか悲しくて、書いてる部分も、あるんだと思う。

 

 みぃんな揃いも揃って、真っ直ぐだ、白だと、似たり寄ったりな言葉で、私を表しちゃあくれるが。


 そうかい?


 飲んだら「うげえ」と、喉がいがいがするような、赤色だと私は思うがなあ。


 お前らの作る程度の憎悪や絶望じゃあ、人の真価ってのは語れない。


 何だかそう思うものが増えて、気付いたら書いていた。


 全く今日も、絶望が足りないな。


 もっと、目を背けたくなるような場所から這い上がる、誰かの生き様ってのを見せてくれ。



 

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