猫を見てると思い付いたやつです。


 手を抜いてしまうと、死んでしまうと思っていた。

 何でか分からないけれど。


 程々にしてしまうと、終わってしまうと思っていた。

 何でか分からないけれど。


 そういう感性の持ち主として、多分生まれたのだろう。今も余り、適当や、上手く手を抜くという事を、覚えられない。


 まだ若いからだろう。その内分かるようになるさ。先輩方はそういつも、にこやかに言ってくれた。何故だかちょっと、羨ましそうに。

 その意味はまだ、よく分からないけれど、多分この感覚とは厄介でありながら、美しいものなのだろう。


 いつか私も、そうして誰かを羨む日が来るだろうか。


 余り人を羨んだり、妬んだ事が無いから分からない。


 いつ会っても、変わらないと言われる。いい意味で。


 何故だかちょっと、呆れられてもいるけれど。


 君は白だ。君は芯がしっかりしている。君はいつも真っ直ぐで、冷静で、正義感が強くて、負けん気も強い。


 子供の頃から、誰に会っても言われて来た。私を成しているのは言い換えれば、これっぽっちの要素であり、それは単純な人間なのだろう。


 自分でも思う。私は別に、そうは複雑な人間じゃない。


 いつも頭にあるのは、後悔したくないの一つだけ。


 お陰様で今の所、大きな悔やみも無く生きている。


 ラッキーだったななんて、決して簡単には言われたくない。


 後悔してしまわないように、今を地獄のような道を選んで走って来た。


 苦痛を今に回し続けて来た。


 だから、何か心残りを作ってしまうのが、とても怖い。


 どうしようも無い頃になって、過去に追い詰められるような経験を、私はまだ真面まともに、した事が無い。


 死んでしまった人はいるけれど、気付けば受け入れてしまっていた。


 上手くいかなかった事が沢山あるけれど、でもあの時はあれ以上の事は出来なかったじゃないかと、いつの間にか受け止めていた。


 だって常に、懸命だったのだ。


 いつもその時の、最高値を出していたのだ。


 悔しいとは焼ける程に思っても、後悔はちょっと、出来ない。


 悔やむ隙も無く、全てを出し切って来たのだから。


 いつも。常に。


 いい事だと、思う。


 余り、味のある人生とは、言えないかもしれないが。


 目標とはいちいち、口にしなくてもいいと思う。

 口にしてしまえば安っぽく響いてしまって、何だか私には勿体無い。

 黙々と励む方が、私には本気に映る。


 口も利けない獣のように、内に秘めていればいい。


 何故だかそれを思う時、どうにもあのいけ好かない生き物を思うのだ。


 あの太々しい態度で睨んでくる、猫のように。


 やっぱりあの目は気に入らないが、不思議な事に、嫌いじゃない。




  

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