第7話 : 陰陽師
「倉橋さんは、目では見えない存在って信じますか?」
"モノ"と遭遇した翌日。学校が休みのこの日、私は蘆屋書店の奥の部屋にいた。お茶と茶菓子に出していただいた七福神あられを目の前に、和也さんは真剣な面差しでそう口にした。
「目では見えない存在・・・ですか?」
「はい。分かりやすく言うと、幽霊だとか妖だとか」
「・・・五分五分です。物語とかではよく見かけますが、そういったものを今まで見たことが無かったので、どうなんだろう、といった感じで・・・でも」
昨日見た"モノ"もそうだけど、群馬に来てからそういったものを見かけるようになってからは、もしかしたらいるのかも・・・とは思うようなった。
「ありがとうございます。考えは人それぞれかと思いますが・・・現実、倉橋さんの目にはそういったものが見えています。では昨日のあれはなんなのか、気になりませんか?」
「き、気になりますっ」
和也さんはそんな私の返事に対して1つ頷くと、一度目を閉じそしてゆっくりと開いた。
「あれは、幽霊でも妖でもなく、妖怪と呼ばれる類のものです」
「妖怪・・・」
「そう、妖怪です。妖力と呼ばれる力を駆使して妖術という術を使い、人間に害をなす存在の事をそう呼んでいます」
物語とかで見るようなものならすぐに理解できるけれど、現実にいると言われても、いまいちピンと来ない。
「ピンと来ない、と言いたそうな表情ですね」
「っ!・・・は、はい」
その洞察力の良さはちょっと心臓にわるい・・・かも。
「それもそうですね。ではまず身近なことからお話ししましょう。まずこの世界にある自然には"霊力"と呼ばれる力が宿っています。霊力とは、生きるためのエネルギーの1つと考えて下さい。そしてその霊力は人間1人ひとりにも存在します」
「私にも、ですか?」
「はい。霊力は目には見えませんが確かに存在しています。そしてその霊力と似た力を持つ"見えない"存在がいて、その存在のことを私たちは妖と呼んでいます。そして彼らが持つ力のことを妖力と呼んでいます。妖は古来から存在し、人間の見えないところでひっそりと生きてきました。しかし、時には人間に牙を剥く妖もおり、そんな存在のことを妖怪と呼んでいます」
「それが昨日の・・・ですか?」
「そうです。妖怪は霊力を奪ったり、人間をさらって食うなど、人々を度々見えない恐怖へと突き落としていました。そこで立ち上がったのが、"陰陽師"です」
名前くらいは聞いたことがある。なんだか不思議な力を使って戦う、とかいう人たちだったような。
不思議な力・・・ん?
ちょっと待って。昨日現れたのが妖怪で、和也さんからは「おんみょうがしら」とか言う単語が聞こえたけれど。
・・・え、まさか。え、やっぱりあれって。
「和也さんって、もしかして・・・陰陽師?」
すると、和也さんはニコっと笑みを浮かべた。
「はい、そうです」
え・・・えぇーーーーー!!!!
「驚かせてすみません。きちんとお話ししますので」
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