始まり

授業も終わり、放課後。


全員初めて行使した魔法で興奮しており、騒ついていた。

こう言った時は事故が起きやすいためか先生もとい部長は珍しく教室に残って様子を眺めていた。


「さてと、俺はそろそろ部活申請などしてかないとな」

「お、いつの間に決めたんだ?」

「いつと聞かれても困るが…何となく面白そうな部活が思いついてな」

「ふーん、そっか頑張れよ」

「お前も宙ぶらりんは辞めて早く何か見つけろよ」


俺は友人の裕太とそんな話をしながら軽くスマホを弄る。そして、ある人の様子を確認して話しかける隙がないか観察を続ける。


「おーい、何見てんだよ?」

「え?どうかしたのか」

「いや、お前がさっきからテキトーにスマホゲームをしながらある一点を見つめてりゃ気にもなるだろ」

「そんなに見てたか?」

「やっぱりどっか見てたのか…誰を見てたんだ?」

「戸隠を見ていた。俺が設立したい部活の関係でな」

「なるほど…とか言って本当は」

「ないない…もうほんと」


俺はそのまま言葉を続けようとするが咄嗟に区切る。


「まだ、そんなの考えられないし」

「本当かなぁ〜」


意地悪な笑みを裕太は俺に向けてそう言う。俺は否定しつつもどこか上の空だった。

こいつの抱えてる事情についてはある程度わかってきた。


しかし、本当に手を出すことが正解なのか?


いや、もう決めたことだ。

今更どうこう言う段階はとうの昔に過ぎた。


「そういえば、椎菜は?」

「…」


やはりダンマリか。

先ほどの授業を終えてすぐからホームルームも待たずにいなくなっていた。


「あいつは家の用事でな…どうやら、この先学校行けるかも怪しいらしい」

「そうか…来れるといいな」

「……そうだな。俺も来させて見せるよ。あいつも楽しそうだったからな」


ここから俺たちの会話はいつものように他愛もないものになっていき、犬神が話に入ってくる。


「我が盟友達よ。我らを縛る戒めの時間は終わり、我々の楽園はすぐそこにある。共にアカシックレコードの序曲を奏でようではないか」

「「…」」


俺たち二人は顔を見合わせる。

不思議と笑ってしまう俺たちがいる。


決して、おかしなことを言われたわけではない。


ただの遊びの誘い。


「そっか明日から土曜日か俺は少し用事があってな日曜なら空いてるかもしれない。裕太は?」

「お、俺は日曜だったら…いや、行けると思う」

「そうか、ならば我と共に余興を楽しもうではないか」


俺たちはそうして日曜に外に出る約束をする。


そうして俺たちは教室を出るのだった。







寮に戻った俺は着替えを済ますと部屋を出る。

出たところにはセイが既に待っていた。


「兄貴、今日は俺が付き添うぜ」

「それはよかった。けど、目的地に着いたら俺は電話しなきゃ相手がいるから構ってやらないぞ」

「分かってるよ。姉さん達は今部活中だからさ行こうぜ」


こうして二人で学校の敷地外に出るのだが、そういえばセイと二人で出かけるのは久しぶりのような気がするな。

基本的にロナかルナが俺の近くにいたからセイと二人になる機会は少なかった。


電車を待つ。


「学校はどうだ?」

「すげぇ場所だよな。なんというかただの子供の世界なのにスッゲェ世界が狭いように見えて広く感じるだ」

「俺にその発想はなかったな」

「兄貴は学校に初めて来た時どうだったんだ?」

「そうだなぁ小学校とか学校というのは通って当たり前だったからな…ただ、これから何が起きるのか楽しみだった気がする」


小学校とかそんな昔の記憶は曖昧で憧れとかあったのかもしれない。

しかし、当たり前になってる今となってはなんの感慨も無くもう消えてなくなってしまった思い。


「お前が楽しそうでよかったよ」

「兄貴は楽しくないのか?」

「楽しいよ。純粋に楽しめないのが少し残念だ」


電車が来て俺たちは乗る。

セイは俺の気持ちがわかっていない。

でも、察しがいいから多分、分からなくても気付いているのかもな。


まぁ、関係はないな。


「俺はお前達が幸せなら良いんだよ」

「…兄貴」


そこからは他愛もない話になっていき、目的地に着く。

そこは


「兄貴、もう少しいい場所なかったのか?」

「仕方ないだろ。ここくらいしかないんだからよ」

「それでもファミレスって…」


ドリンクバーでもアイスでもなんでもござれと言わんばかりのファミレスだった。


俺たちはテキトーに注文して、携帯を取り出す。


「それじゃ、セイは周囲を警戒しててくれ」

「分かってるよ」


そうして、俺は携帯を弄らずに。

耳に当てる。


「もしもし、あの件はどうなった?」


俺が話し出すと後ろから声が聞こえてくる。


「どうなったって…他の部署とかにも聞いたならわかるでしょ?」


若い女性の声。

俺はその声を知っており、そのまま会話を続ける。

「いやいや、うちと向こうとじゃコネが違うだろ?」

「それもそうね」

「それでこの日本いや、世界にもとより存在する魔法などの力を使う者について調べは着いたか?」

「まぁ、大凡はね。というか部長がすぐ出してくれたからそっちに聞けばいいのに。同じ場所にいるのでしょ?」

「下手な接触は疑心を生む。分かってるだろ?」

「はいはい、部長も貴方も本当に警戒心強いんだから…」


呆れた声で言われるがそれを言われると耳が痛い。


「じゃなきゃエースとか呼ばれてないよ」

「はいはいわかりました。貴方が来てからエースを奪われてベータに格下げされた下っ端ですよ所詮私は」

「その件をまだ引っ張るのか…」

「一生引っ張ってやる」

「強い意志を感じる」

「まぁ、無駄話は置いといてそれで今回の調査結果についてだけど、思った以上に沢山出てきたわ」

「…なんか、急に聞きたく無くなったのだが」

「優しい私は具体的な数まで教えてあげる」

「やめてくれこれ以上厄介ごとはごめんだ」

「8つ、私の知る限りの数ね」

「…意外と少ないいや、感覚が麻痺してるだけだ」

「賢明な判断ね。話は進めるけど…見つけたわよ霊術士いえ、陰陽師を」

「それは家系をか?」

「当たり前でしょ、じゃなきゃ報告できるわけないでしょ」

「なら、教えてくれ」

「本当に淡白よね〜いいわ。安倍はまぁ、安倍晴明とかで有名だから知ってるよね。他にも土御門、加茂…他にもあるけど貴方が知りたいのは…これでしょ?日下部」


その一言だけで俺は黙る。

そして、少し考えて


「まだあるならテキトーに言ってくれ…」

「とは言ってもこれ以上は有名どころ、あるとしたら…村上とかくらいかしら?」

「わかった。助かったよ」


そうして、俺は携帯を下ろそうとすると。


「ちょっと待った!今回、何でわざわざベータ部隊が動いたと思ってるの!?」

「ん?個人で調べてくれたわけじゃないのか?」

「ええ、そうよ。今回はベータ部隊が動いた。その意味、分かるわよね」

「そうか、部長はなんと?」

「あんたの指示に従いなさいとのことよ」

「なら、連絡は切るぞ。ちょうど注文の品が届いたところだ」

「分かったわ私は一足先に動いておくわ」


そうして携帯を下ろす。

それと同時に後ろの席の女性は立ち上がり店を出るのだった。


「兄貴、パフェの上に通信機というのはどうかと思うのだけど…」

「この店の管轄に言え」


そう言いながら注文した品と一緒に来た小型通信機を綺麗に拭き付ける。

そして、起動する。


「さてとセイ仕事の時間だ」

「あぁ、兄貴…いや、アルファ3はアルファの命令待機中だ」

「まずはこの通信機をアルファ1、アルファ2に届けろ。そして、チャンネルはこれより12番を使用する」

「了解、チャンネル12番、変更完了。アルファ3これより任務開始します」


セイは先を立ち店を出る。ここでの払いは俺持ちなので問題はない。

さて、ここからが本番だ。


正直、今回の仕事はポーターや部長を介さない為、俺が全体指揮を取らなくてはならない。


「あまり得意じゃないが…やるしかないか。ベータ0、目標1番付近に前進、その後監視せよ」


得意では無くても結局は立場上やらなきゃいけないことだしな。


****三人称



日下部 裕太は実家である東京郊外に存在する和式の屋敷に戻ってきていた。


「ほぉ、帰ってきたか裕太」

「えぇ、それで椎菜は今どうしてる?」

「お前が気にすることではないだろう?」

「叔父さん、俺も今回の一件を知らされている。知る権利はあるはずだ」


裕太の叔父である土御門 隆(たかし)はため息を吐く。


「お前に伝えて邪魔をされては敵わん」

「ざけんな!」


裕太が怒鳴る。


土御門 隆の服を掴み睨みつける。


「知ってんだよ!椎菜がこの儀式に足る才能がないってことをよ!」

「何故…それを」

「知らないと思ったか!お前達が本当に欲しい生贄は俺や椎菜じゃない!俺のもう一人の親友だってことを!」

「あぁ、そうだ。まさか、お前がそれを知ったりとは思わなかったな」

「椎菜を生贄に捧げてもアレは抑えられない筈だ」

「だが、ないよりはマシだほんの数時間いや、数秒稼げれば同じだけの生贄になれる巫女を用意すればいい」

「そのために椎菜に犬死しろというのか!!」

「犬死?誉ある死であろう。そして、それが巫女として生まれた者の役割だ」

「それでもお前は父親かよ!」

「あぁ、父親でありこの地区を守る陰陽師の長でもある」


土御門 隆の言葉に裕太は我慢できなくなる。


拳を振りかぶり顔面に一撃入れる。


「…これで満足か?」


土御門 隆の言葉に裕太は何の答えも言えない。


「お前はお前で頭を冷やせ。お前の子だ裕一、お前がどうにかしろ」


土御門 隆の呼び声で外で待機していた一人の男が部屋に入ってくる。


「親父…あんたもかよ」

「…すまない。これがこの家で生まれた者の宿命だ」


裕太は簡単に自分の父、日下部 裕一に拘束されて連れていかれる。

そして、連れていかれた先は古い木でできた牢屋だった。


「儀式が終わるまでの間お前をここに監禁する」


裕太は牢屋に放り込まれると、鍵を閉められて外に出ることなく叶わなくなる。


「…なぁ、親父…」

「…」


裕一は自分の子供の声に返事をしない。

しかし、立ち止まる。


「俺は…唯一残った昔馴染みを救えないのか?」

「…」


沈黙が辺りを支配する。

数分、その間は互いに何を思い何を考えていたのか本人にしか分からない。


ただ、一つ言えることは裕一は何も言わずに立ち去ったことだけだった。


「くっそ!くそ!くそ!くそくそ!ざけんなよ!失って…それが嫌で大事にずっと…守れるようになろうとして…間に合わないのかよ!」


裕太の声が響く、それは外には届かない。

ただ…



「本当は分かってるんだよ!この儀式は大事だってことくらい。どれだけ危険だとか分かってんだよ!でも、、でもよ!俺は…俺は親友を失いたくない!」


矛盾した感情が裕太の心を蝕む。


そうして…



「…はぁ…スー…はぁ…」


喚き疲れた裕太は虚な瞳で木の格子にしがみついていた。


「…」

(どれだけ時間が経った?…儀式は土曜の夕刻から…それまでにこの格子を破壊できるか…無理だ。この場所は魔力や霊力で強化されている俺程度の能力で2日3日で破れるものではない)


「…結局…俺は失うしかないのか…」


涙が流れる。


頰を伝ったその涙は零れ落ち地面に音を立てて落ちる。



バギンッ!!


同時だった。


牢屋の鍵が破壊され、抵抗なく動く格子に支えられていた裕太の体は盛大に倒れる。


「…一体…」


鍵を見ると何かに打ち抜かれたかのように粉々に破壊されている。


「何に踊らされてるのか…何が目的とか…色々と疑問はある…でも…」


裕太は拳を握りもう片方の手で涙を拭う。


「踊ってやろうじゃねぇか。俺の親友を救う…そのために」


裕太は動き出す。

自分の大切な親友を助けるために、くだらない儀式を終わらせるために。







目標1。


東京郊外に存在する屋敷。

日下部の本家、土御門の屋敷近くの山の中に何人もの人影が潜んでいた。


「こちらベータ人物Aがどうやら地下にて監禁されてる模様」


そんな中で唯一淡々と報告して現場指揮を担ってる少女はベータ。


『隠密部』所属の2番部隊、ベータ0のリーダー。


「解放させろと言っても…中にバレずに入るなんて無茶だし」


彼女が考える。

この独り言は現在ある人員に助けを求めるための合図であり、潜んでいる者達の中にも声を上げるものもいる。


「んーどれも決定打に欠けるわね」


そうして悩んでいると…


一人、ベータ0の人間でない者が声を出す。


「なら、ここは任せてくれ」

「へ?」


急なことにベータは視線をその人間にむけてしまう。


そして、それをベータは見た。


手で銃の形を作って屋敷に向けているソレの左目は怪しく光っており、紋様を浮かび上がらせていた。


何か言ってるのは聞こえるがその内容まではベータには聞こえてこない。


そして、気がつけばとてつもない魔力が放たれる。


「…ってばか!周りに…」


しかし、目標1からこちらを見るものはいない。


「破壊を完了した」


ただ、その一言が聞こえてくる。


ベータは現状を把握しきれていないが分かることが一つある。


「人物Aの救出を確認。こちらの暴露はなし」


報告をするベータの心境は複雑なものであり、冷や汗を流す。


(これがアルファ…いや、アルファ隊の実力)


そうしてる間にもアルファからの指示が来ており、ベータは自身の部下に命令する為、報告のため、反芻する。


「…了解。これよりベータ0は二分し、ベータ0-1は引き続き目標1の監視、ベータ0-2はアルファ0の指揮下となり、人物Aの監視を行います」


彼女の声を聞いていた部下達はすぐに再編を行い、配置につく。


「では、こちらも人物Aの監視をする。アルファベータ混合の一時チームのリーダーはアルファ1が来るまで自分が務める」


男はそう言って再編し終えたベータ0-2を纏めて動く。

アルファ隊とベータ隊が混合になることは任務上珍しいことではない。


理由はアルファ隊のメンバーが合計で四人しかいないからだ。


故に人数の調整時にアルファとベータ混合チームになることは多かった。

故に全員が慣れた様子でチームの再編が行われていた。


そして


「アルファ2、ただいま目標1に到着しました。これよりベータの指揮下に入ります」

 

アルファ2と名乗る少女がベータ0-1の指揮下に入る。

人数、戦闘力、隠密性、色々な理由はあるがこの状況下でアルファ2の援護はベータとしてはありがたかった。


ベータ部隊は比較的に優秀だが、万能型の秀才が多い。

故に、ベータ部隊にある人材ほどではないがそこそこ万能かつ特化した力を持つアルファ部隊の面々の助っ人というのは戦略の幅が広がり、部隊としての力が大きく向上する。


「それでは引き続き、ベータ0-1は目標1の監視を行います」


そう言って、ベータは再び茂みに潜むのだった。





一方、数十分の時間が経ち裕太は屋敷から抜け出していた。


「はぁはぁ、バレて…いや、中がざわつき始めてる」


裕太は楽観しないように言った言葉だったが現在、裕太の脱走が土御門 隆に伝わっており捜索が始まっている。


じきに屋敷の外の捜索が始まり見つかるのも時間の問題となる。


それを避ける為にも裕太は走る。


裕太の目的はあくまでも椎菜の発見と連れ出し、故にわざわざ逃げる必要はない。

しかし、それはあくまでも椎菜の居場所を知ってることに限った話である。


屋敷内に椎菜がいないことは確認しており、かといって、彼が儀式の場所を知ってるわけではない。


「どうするか…だな」


途方に暮れた様子で街を歩く裕太。


そんな時、誰かにぶつかる。


「す、すいませ…なんで…」


ぶつかった存在を確認した裕太は声を失う。


「なんでって言われてもな…敢えて言うならなるべくしてなったと言うべきか?」


そこにいたのは、有明 楼だった。



**楼side



人物Aもとい、裕太と接触した俺は普段のノリで話す。


「お前こそ何してんだ?」

「…いや、散歩だよ」

「散歩…か。こんな怪しい人を引き連れたか?」

「は?」


俺の言葉に裕太は呆気に取られる。

その時、俺の視線に気付いたそいつらは一斉に襲いかかってくる。


「えーっと炎の壁…かな?」


だが、その襲い掛かられる前に俺は炎の壁を自分と裕太の周りに張り行く手を阻む。


「嘘だろ…逃げ切って…」

「残念ながら普通の相手ではないみたいだな」


驚いてる裕太を庇うように俺は立つ。

見ていれば炎の壁なんて、関係ないと言わんばかりに突っ込んでくる人間が何人もいる。


俺はそれを抑え込み、相手を見る。


「二つのグループ?」


よく見れば二つほど分かれてるように見える。


「裕太、とりあえず後で説明してもらうぞ」

「…え、あ、あぁ!」


魔法を使う、そして薙ぎ倒していく。

風で足を止めさせ、土でバランスを乱す。


炎と水で主に攻撃し、一人ずつ無力化していく。


そして…


「さてと、今の状況を教えてくれないか?」

「…いや、

「拒否権はなしだ」

「わ、分かったよ」


裕太が説明を始めてくれようとする。


のだが、やっぱり一枚岩じゃなさそうだな。


「邪魔してもらっちゃ困りますよ坊ちゃん」


その声と共に乾いた破裂音を辺りに響かせる。


その音に俺たち二人は反応する。

そこにいるのは拳銃を持った男だった。


「えーっと、お知り合い?」

「そんな危ないものを所持してる知り合いはいない」

「それは…よかった」


どこからどう見ても陰陽師関係に見えない、スーツを着た男性だった。

年齢は格好の割にだいぶ若い。同い年…少し上くらいに見える。


「あんたは何者だい?その銃、ただの銃とは言わないだろ?」

「へぇ、あんたこそ何者だい?」


俺と男は警戒するように距離を取る。

俺が逃げ出そうとすればこの男は容赦なく引き金を引く。

しかし、男もまた迂闊に引き金を引かない。


「まぁ、こっちの事情を話す気はないけどあんたの目的はなんとなく分かるな」

「へぇ、それが事実としてあんたは俺の邪魔をするのか?」

「さぁ、自分の名を売り込みたい連中なんて知ったこっちゃなぁって話だ」


俺は肩を竦める。


「それもそうか。そこで一つ提案なんだが、俺と共闘する気はないか?」

「いいのか、お前はここに伸びてる奴側じゃないのか?」


俺の質問に首を振る。

どうやら、あくまでも案を売るための行動らしく、どちらの勢力でもないみたいだ。


要するに男からしたら俺たち側に着くことによって得がすることがあると考えるのが妥当だが…なんとなく理由は想像は難くない。


「それで、どうするよ裕太?」

「お、俺?」

「あぁ、だってお前の問題なんだから」

「えーっと…お前は?どう思う」

「質問を質問で返すのか。でも、俺からしたらなしだがな」


俺の言葉に男はピクリとも動かない。

反対に裕太は不思議そうだ。


「裕太お前の目的はなんだ?」

「それは…親友を助けることだ」

「それだけか?」

「え?」

「俺の分かる限りだと裕太の願いもこいつの見返りが合ってないみたいだ」


俺の解答にどこか納得した様子の男。

正直そんなあっさりとと思うがまだ、裕太は混乱状態である。


「さて、次は互いに争わないことを祈るぜ」


そう言って男は姿を消す。

それと同時に陰陽師以外の勢力だと思われる人間は一人もいなくなる。


「裕太、さっきの質問答えてもらおうか」


そう、これが全てのはじまりだった。

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