フィリオクエ
ネコ エレクトゥス
第1話
俺の名はフィリッポ・マルローニ。この薄汚れた街でしがない探偵家業をやっている。俺のところに持ち込まれる依頼ときたら爺さんの入れ歯がなくなったから見つけてくれだとか、逃げた子猫を探してくれといったしけたものばかり。食いつないでいくのも楽じゃない。
しかし食いつないでいくのも楽じゃないといっても何かを食わねばならぬ。そこで今日は買い溜めしといたカップ・ラーメンのそばを食べることにする。ちょっと待て。何かがおかしい。そばであるならそれはそもそもカップ・ラーメンではないのではないか。かといって絶対にカップそばではない。この矛盾はいったいどう解決されるべきなのだろうか。人は言うだろう。
「そんなことはどうだっていいではないか。」
しかし俺のような探偵にはこうした細部こそが重要なのだ。かつて俺たち探偵の師であるシャーロック・ホームズはこう言った。
「細部に明確であれ!」
俺は目の前に与えられた難題に頭を研ぎ澄ます。しかし分からない。もしかすると俺は骨相学的に見て前頭葉に問題があるのだろうか。遂に断念してカップに書いてある表示を見ることにする。『即席カップめん』。なるほど、納得。まっ、そんなことはどうだっていいか。
しかし余計なことを考えていたせいで熱湯3分をとっくに過ぎてしまっている。やってしまった!痛たたたた。それでもカップめんはうまい。
しかしこのうまさはいったい何処から来るのだろうか。つゆとめんと揚げ物の絶妙な一体感。つゆやめんが単独でうまいという訳ではあるまい。めんそのものを単独で食ったら絶対にまずいはずだ(今度試してみるか)。かといってつゆが全てを決定するという訳でもないだろう。であるならばつゆがつゆであり、めんがめんであるというように分たぬ仕方で両者は一体であると考えるべきなのだろうか。しかしもしそうならつゆのうまさはつゆから出て直接揚げ物に伝わるのだろうか、それともつゆとめんから揚げ物に伝わるのか。分からない。今度メーカーに直接問い合わせてみることにしよう。
俺の名はフィリッポ・マルローニ。この薄汚れた街でしがない探偵家業をやっている。俺のところに持ち込まれる依頼ときたら爺さんの入れ歯がなくなったから見つけてくれだとか、逃げた子猫を探してくれといったしけたものばかり。食いつないでいくのも楽じゃない。
俺は今チーズ・バーガーを食べている。このパンとハンバーグとチーズの絶妙な一体感。いったいこのうまさは何処から来るのだろうか?
フィリオクエ ネコ エレクトゥス @katsumikun
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