六月二十四日

生温かい扇風機の音を感じながら、

ベッドの上でじっと天井を見つめている。



クーラーの壊れたこの部屋に通うようになってもう1週間だろうか。

北海道出身のわたしは暑さにはほとほと弱いはずなのに、

すでに慣れてきている身体に感心すら覚えている。

生命力とはこういうことなのか。

何か新しい環境に置かれ、たとえそこで生きていくのが困難に思えたとしても、

ふと気がつけば悩んでいたことなど忘れている。

なんだかなぁ、とも思うけれど、そういうものなのだ。



しぜんと涙が出てくる前に、自分から泣くようにしている。

本当に悲しいときには泣けないし、

わたしが泣くときは大抵決まって限界がきたときなのだ。

だからYouTubeで有名人の弔辞を聞いたり、悲しい映画を観たりする。


歌詞のある音楽は聴かない。

疲れてしまうからだ。

そういうときはJAZZを流したり、

ピアノのインストを聴きながらベッドの上でぼーっとする。



そんな一日がわたしには必要なのだ。

平日は大学に通い、夜までバイトする日々の中で、

周りの子達は土日も遊んでいるけれどわたしは疲れてしまう。

なにもしない日がないと、わたしはわたしでなくなってしまう。


気持ちを空っぽにして、なにも考えず、日が昇るときに目が覚め、

暗くなっていく空を窓越しに見上げながら一日の終わりを感じる。

ゆっくり湯船に浸かって、ベッドにラベンダーのアロマを垂らし眠りにつく。

そうやってわたしは続く1週間を乗り切っていく。


飾らない言葉で生きていきたい。

だけど、強くあろうとすればするほど飾らないでいるのは難しい。

悲しいときも泣かなくていいよと、

泣けないわたしを肯定してくれる人がいたならば、

この世界はわたしにとって、ほんのすこし優しい場所となるだろう。




去年まではクーラーをつけっぱなしにしていたわたしが、

いまは蒸し暑いこの部屋で寝転んでいる。





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