少なくとも彼は愚かで弱い生き物である
白いもやが掛かった、太陽の光が差し込む浜辺。
流れ着いた丸太に”とある男”と天野 猛が一緒の椅子に座っていました。
「最近どう?」
と、優しく語りかけます。
「不調かな? Fall○ut4ばっかりやってたりするけど、正直自分の人生って棺桶に片足突っ込んでるんだよな・・・・・・10年、20年先のことも分からない。ただ親の顔色を心の奥底で気にしながらビクビクと生活しているよ。まあ以前よりかはマシだけど」
「うん。つい数年ぐらい前は本気で死ぬこと考えてたもんね」
「まあな。まあ自業自得だけどね」
そういってふうと溜息をついて自分の体を見ます。
「歳はとりたくないな。すっかり中年太りしちまったよ・・・・・・雑誌投稿小説一度も完成させたこともないし、何が夢はラノベ作家だ。ラノベ業界もどんどんおかしくなっている気がするし、これから先どうなることやら」
「愚痴ばっかりだね」
「夢を追えば夢は必ず叶うって言える年齢じゃないからね・・・・・・この十年、ニートやってた期間長くて、人生経験なんてろくに積めなかった。どこで人生の歯車が狂ったかとか言われたらたぶん中学時代なんだろうけど――まあ自分にも悪いところはあったし、復讐しようだなんて考えも過ぎた話だ」
「そう言えば病的に創作活動に走り始めたのってその頃だよね。やっぱり――」
「ストップ」
男は手で猛の台詞を制した。
「確かに言わんとしていることは分かる。だけど過ぎてしまったことなんだ。それに当時の自分も優良な生徒とは言い難かったし、バチが当たったんだろう。過去の事を悩んでも仕方ない。残酷だけど、過ぎたことなんだよ・・・・・・誰も時計の針は戻せやしない」
「それでいいの? 復讐したいとか考えたことは?」
「あったさ。特にニートになってた時期は世の中に恨み辛みを――逆恨みって奴をしたこともあった。その流れでそう言うことも考えたさ・・・・・・だけど、結局は出来なかった。と言うかそれ以前の問題さ」
「その・・・・・・ニートだったから?」
猛は遠慮がちにいいました。
「ああ。自分なんか死んだ方がいい。いっそ事故でも遭遇してくたばった方がいい。死ぬ勇気もない。家に出て行く度胸もなかったし、災害でも起きて世の中メチャクチャになっちまえばいいとかも考えたこともあった・・・・・・親に言われたよ、俺は楽な道、楽な道ばかり選んでるって。今もそうだ。だからこうして、嘗ての同級生はフルタイムで頑張っているのにも関わらず、呑気にこんな物語を綴れる時間があるのさ」
「・・・・・・だからって、あんまり自分を責めるのはよくないと思うよ」
「誇れる人間じゃないんだよ自分は。たぶんこの報いは何らかの形で受けるんだろう――もしも昔に戻れたら幾らでもつぶしが利く人間になりたいが・・・・・・それはできない相談だ」
そして男は空を見上げました。
「そして今もこうして絵や物語を創り続けている。一昔前と違ってゲーム機やゲームを自分の金で買えるようになった。ガンプラやフィギュアも沢山買えるようになった。俺の夢は――とりあえず独り立ちできるぐらいにラノベだかライト文芸だかの世界で成功することさ」
「やっと明るい話題になったね」
猛は微笑みます。
「それしかもう自分の道はないと考えて開き直ってるのもあるがな・・・・・・世の中、色々と辛い事は起きるけど、大災害とかに遭遇して本当に辛くなったら・・・・・・そうだな。歌でも歌うか、変身してヒーローでもするか・・・・・・」
男はこの台詞を綴りながら微笑みました。
晴れやかな気分。
きっと第三者から見ればなにを書いてるんだこいつとか気色悪いんですけどとか思われるのでしょう。
でも、男はそれでもいいと思いました。
脱字、誤字のオンパレード。
駄作どころかエタッた作品数は数知れずなダメダメ作家な男は時折ふと悩んでは何時もこうして同じ結論に辿り着くのです。
そして男は丸太から立ち上がり、それに合わせて猛も立ち上がって帰路につきました――
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