しんじつ 3

「でも、どうやって追い出すんですか?」

「それはねー」


首を傾げるパフィンに、ナツメはボロボロに錆びた鉄柵の向こう側に広がる真っ白な空間を指差す。


そこには白いモヤモヤとした雲のような小さな塊、そして周囲に0と1の数字が不気味に現れては消えてを繰り返す赤い立方体のような物質が無数に浮遊していた。

白い雲の数は赤い立方体と比べると浮かんでいる数が少ないが、立方体はまるでそれらから逃げるかのように上に左にと不自然な揺れ方をしている。


「アレ何ですか?」

「白い方はパフィンちゃん達の……ていうか、この世界全体に元々あった大切なもの」

「うぅーん……?」

「簡単に言えば、メチャクチャになる前のパークの思い出。パフィンちゃんが本当の存在だった時の思い出も、あそこにあるよ」

「ほんとーのそんざい……?」


ナツメが説明する度にパフィンは余計に首を捻っていく。どんどんフクロウのようになっていくパフィンにナツメは苦笑いを浮かべつつ、今度は立方体を指差す。


「あの赤いのはね、アイツが外から持ち込んだ異物。この世界にはなかったもの。パークがおかしくなった原因……って言ってたよ」

「えぇ!?」


捻った首が一気に戻ったパフィンは、無数の立方体から離れるように後ろへ飛び退く。

同時に、ナツメの説明に引っかかるものがある事にふと気付く。


「ねぇねぇナツメちゃん。って、誰が言ってたんですか?」

「あれ」


と、ナツメは即答と共に、ビルの中に通じるのだろうか、やや錆びた扉が付いている出っ張った壁に不法投棄されたかのようにポツリと置いてある古めかしい茶色のブラウン管テレビを指差す。


つまみを回してチャンネルを変えるタイプのそれは、汚れた画面にくすんだカラーバーが音もなく映し出されている。


「あれって……」

「うーん……まあ、この世界の神様……みたいな?」


どこか曖昧な言い方をするナツメが首を小さく傾げ、パフィンもそれに釣られてコテンと首を傾げる。

と、その時。テレビの画面が突然別の映像に切り替わる。


画面には、鈍い輝きを放つ日本刀を携え、蓑笠を深く被った侍らしき男が、刀を持った複数の男を前に立ち尽くしている様が映されていた。


“この前ぶりだな、越中屋域右衛門えっちゅうやいきえもん

“き、貴様!あの時死んだ筈では……”

“はっはっは……この世に悪党ある限り、閻魔様は何度でも俺を現世に突き返すんだよ”

“ぬうう、くたばり損ないが!者共、出会ええい!”

“町の連中から巻き上げた金で肥やしたその腹……鬼に代わってかっいてやる!”


……といったやり取りの後、男達は熾烈な争いを繰り広げる。


「何ですかこれ?」

「あ、これパパが好きだった時代劇だ」

「ナツメちゃんのパパさん?」

「うん。黄泉返り富之丞とみのじょうって番組」

「へー……」

「時代劇ってつまんないよねー」

「パフィンちゃん、ペパキュアが見たいです……」


突然始まった時代劇。思い出したように口を開いたナツメは、あまり興味なさげな様子のパフィンと一緒に床に座り込む。

しかし、ものの数分も経たない内に時代劇はスタッフロールが流れ、少しのCMを挟んだ後は____


“ペパキュア!このあとすぐ!”


「うきゃあー!!ペパキュア始まりまーす!!」

「ペパキュアだー!!」

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