しんじつ? 1
「…………」
目を覚ます。いつの間にか眠っていたらしい。
上半身を起こす。冷たく固い床の上で寝ていたようだ。
辺りを見渡す。白い霧と静寂に包まれた風景が広がり、どうやら今はビルの屋上らしき場所にいる。
「おはよ」
「ふぃ……?」
傍から声が聞こえた。振り向くと、見たことのない女の子が微笑んでいた。
パフィンは未だぼんやりとした意識の中、目をこすりながら立ち上がって女の子の前に歩み寄る。
「初めまして、だね。私ナツメ。あなたは?」
肩まで伸びた黒い髪に、黒いベストに白いスカート姿の女の子は、パフィンと背丈がほとんど同じな小柄な体型をしていた。
ぱっちりと開いた目にどことなく明るい顔立ちのナツメと名乗った彼女は、そっくりとまではいかずともパフィンと似た雰囲気を帯びており、対するパフィンはきょとんとした顔で彼女を不思議そうに見つめていた。
直後に顔を覗き込まれたパフィンは、ワンテンポ遅れて我に返る。
「ふぁ……あ、パフィンちゃんはパフィンちゃんでーす!」
「パフィンちゃんはお寝坊さんのフレンズだな?ていっ」
「ぷぃん!?」
寝ぼけ眼のパフィンにいたずらっぽく笑いながら、ナツメはパフィンのおでこにデコピンを一発浴びせる。
思わずのけぞったパフィンは、突き抜けるような痛みと共にほんのりと赤くなったおでこを両手で押さえ、涙目でナツメに目を向ける。
「いだいでぇす……」
「あははは、ごめんごめん。でも目が覚めたでしょ?」
おでこをさするパフィンだが、不思議と痛みはスッと波が引くようになくなっていき、ナツメが言うように先程までぼんやりしていた意識も驚くほどクリアになっていた。
目をぱちくりさせるパフィンが改めてナツメを不思議そうに見つめると、ハッと思い出したように辺りを忙しなく見回し始める。
「って!ここどこですか!?シーラさんやジョフさんは!?あれ!?パフィンちゃんさっきまで空飛んでたはずですけど!?」
意識が鮮明になっていった事でようやく事態の異常さに気付き始めたパフィンは途端にパニックを起こし、頭の羽根をバサバサと激しく羽ばたかせる。
その隣でナツメはパフィンが慌てふためく様をケラケラと面白そうに笑いながら眺めており、肩を指先でツンツンと軽く小突く。
「連れて来たの、私だもん」
「なんでですかどーやってですかいつのまにですかおなかすきましたー!!」
パニックのあまり、ついには空中に浮かび上がりブレイクダンスのように逆さまになりながら高速回転を始めるパフィン。
そのまま回転しながら床に頭から激突してパタリと床に倒れ伏したところを、目の前にしゃがみ込むナツメに頭のコブをつつかれながら涙目で顔を上げる。
「だいじょぶ?」
「いだいでぇず……」
「だよねー」
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