シ繝ウジツ 2

「ヤマタノオロチとタビーとスカイフィッシュが最初からまともな状態だったの、そのお酒を飲んだから?」

「うむ。四神からくすねた……という事になっとるが、先の話の手前、その記憶すら怪しいがの」


腰に引っ提げた徳利とっくりを見せるヤマタノオロチの表情は少しばかり暗いように見え、隣のスカイフィッシュも悲しげに目を伏せている。


暗い空気が漂う中、突然ジョフが耳をピクつかせてハッと顔を前に向ける。


「……足音!誰か来るでち!」

「ほんとですか!?」


ジョフの言葉に一同の間に漂う空気が一気にザワつき始める。そしていの一番に飛び上がったパフィンは、その方向に向けて飛び出そうとする。


「待て」

「ぷぃびん!?」


が、ヤマタノオロチの背後から伸びる蛇が目にも止まらぬ速さでパフィンに巻きつき、身体を絞め上げる。


「考えもなしに飛び出すな、馬鹿者」

「で、でもぉ……おじさんかもしれませんし……」

「……おい」


巻きつく蛇にぶら下がるパフィンの言葉を聞いたヤマタノオロチが表情を強張らせる。それと同時に、一同は彼女から発せられるただならぬ雰囲気に口を開かなくなり、パフィンに歩み寄る彼女に視線を向けたまま立ち尽くす。


「お前、先もそのとやらを口にしていたな」

「ふぇ……?」

「…………。まあよい、話は後にしようか」


ヤマタノオロチの視線がパフィンから足音のする向こう側へと移ったその直後、不意に背後から歓喜の声が漏れる。


「あ、あれってヒグマじゃない!?」

「キンシコウとリカオンもいるでち!」


見慣れたフレンズ、見慣れた実力者。


その認識を持つシーラとジョフが遠くから駆け寄る三つの影に駆け寄ろうとする。

しかし、パフィンと同じように二人もまた蛇に絞め上げられて宙に浮かぶ。


「ひぃっ!?」

「でぢぃ!?」

「待てと言っとる」


ヤマタノオロチが厳しい表情を浮かべている理由がよく分からない三人が頭に「?」を浮かべるが、不意に目の前に現れたスカイフィッシュが指差した前方に改めて視線を移す。


「な、なあ、アレ……」


その姿がはっきりと見えるようになってタビーが青ざめた表情のまま口を開いた頃、先程見たようにソレ達は確かにヒグマ、キンシコウ、リカオンの姿をしているのが他の者にもしっかりと分かった。

しかし、姿形こそ寸分違わないものの、その目はまるで飢えた獣のごとく釣り上がり、野生解放のそれとはまた違ったおぞましいまでに赤い輝きを瞳に宿しており、さらに全身のシルエットには何か違和感を覚えさせるものがあった。


間もなくその違和感を決定付けたのは、アカリがソレらの身体的特徴をはっきり視界に捉えた際に口にした言葉だった。


「腕……何であんな毛むくじゃらに……?」

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