巻き込まれなかったヤツ 2

んで、会社に戻ってきました。


「……マジ雲隠れ?」


いやいやいやオフィス誰もいないんすけど。ガチでやべー事になってんじゃねえかこれ。


おいマジでふざけんなよ。こちとらまだ今月の給料もらってねーんだぞ。一銭ピーで野宿?いやまあ普通にした事あるから問題ないけどさ。


パークに連絡しようとしたら謎のホラー電波が入るわ、会社にゃ誰もいないわ、そろそろ俺のSAN値がヤバイ。割と冷静に今の状況を分析しちゃってるのもダメージになってるかもしんない。それくらい追い込まれてるよ俺。


親父とお袋……は、ないない。ケンカ別れ同然に家飛び出したからなぁ……今更どの面下げて会えるってんだ。


ならどうするよ?他の社員にも連絡してみたけど当たり前のように繋がらんし、ケータイの充電もちょいヤバめだし、ガチの八方塞がりってこういう…………


「……あれ?」


この番号……誰のだっけ?名前入ってないけど、こんなの登録してたっけか?

さっきのホラー電波と言い、なんか気味悪いな……発信したら女のすすり泣きとか子供の笑い声が聞こえてきたり、画面全体にバケモノの顔が「キエエエアアアアアア!!!!」ってきたりしねぇだろうな?


…………。


「かけちゃお」


そこでかけるのが若さってやつっしょ。さてさて誰に繋がりますかー?そろそろぼっちで寂しいから誰でもいいんで出てくれよなー。


“プルルルルルル……プルルルルルル……”


「もしもーし。って、まだ出てねえか……」


“だ、誰プルルルルルル……”


!?!?


“今のこプルルルルルル……もしかしプルルルルルル……ヨモギくプルルルルルル……”


コ、コールが鳴ったままなのに声が聞こえる……すげえ、どうなってんだこれ!ちょっと面白いぞ!


「もしもし!?俺の声、聞こえますか!?」


“やっぱりヨモギくプルルルルルル……俺の声、聞こプルルルルルル……”


「あー、すんません!とりあえず、受信のボタン押してもらっていいすか!?コール鳴りっぱなしなんで!」


“プルルルルルル……ール?電話はかけてなプルルルルルル……”


「ずっとプルプル鳴ってるんで、そっちの声が途切れちゃうんすわ!」


“一体どういプルルルルルル……とにかく話を聞プルルルルルル……”


あー、ダメだこれ。まともな会話にならんやつだわ。もう一回かけ直したらいいかな?


「あー、すんません!ちょっと一回かけ直し……」


“誰だお前”


……あれ?なんかさっきとは声が違うような……


“質問に答えろ。お前は誰だ”


……やっぱそうだ。さっきとは声が違う。てか、いつのまにかコールが止まってる。

てか、なんかこいつ上から目線で腹立つな……よし。


「お前こそ誰だよ。えらっそうな物言いしやがって。刑事ドラマの真似事か?それともただのアホか?」


“……”


「お前アレだろ?ネット弁慶の派生種だろ?顔が見えないのをいいことにイキり倒して『俺の言ってることは正しいんだー』みたいな主張平気でするんだろ?ダッセーやつだなおい」


“ブツッ”


あ、こいつ切りやがった!卑怯なヤツだなおい!

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