パフィンちゃん、起きる 2
「…………」
「ジョフさぁん……」
「シャァー!!」
「ぷぃ!?」
アカリ達と合流してから数十分後。
我に返ったジョフは顔を真っ赤にして膝を抱え込んで丸くなったまま動かなくなり、声をかけて手を伸ばそうものなら全身の毛を逆立てて威嚇をしてくる有様であった。
「なんかあったの?」
「いや、まぁ、ちょっと……」
後から来たタビー達はジョフの現状が把握できておらず、どういう事なのかと聞かれたシーラも気まずさが先に出て上手く説明できなかった。
と言うより自分達も不思議な踊りでジョフを囲んでいたのを見られているので、そっちの意味でさらに気まずくなっていた。
その光景に苦笑いを浮かべるアカリを一瞥するヤマタノオロチは、背後に侍らせる蛇の一匹をジョフの元へ滑り込ませる。
身体をうずくまらせているにも関わらず服の中に蛇はスルリと潜り込み、首の後ろからニョキッと頭を覗かせる。
「うひぃいいゃあ!!?」
全身をあらん限りにビクつかせながら飛び上がるジョフに、ヤマタノオロチは少し苛立ったように目を細める。
「小僧、いつまで不貞腐れとる」
「ジ、ジョフはこぞうじゃないでぢゅうぅう!?」
ヤマタノオロチにキーキー声で反論しようとするジョフ。しかし、その言葉は突如として顔に圧力が掛かった事で唐突に遮られる。
首から顔を覗かせる蛇が彼女の顔を縛り上げたのだ。
「そういう所が小僧なんじゃ」
呆れたように大きなため息を吐き出すヤマタノオロチ。しかし、顔を縛り付ける蛇が不気味に赤く光る眼で睨みつけてくるため、ジョフはそれに抗議できずに沈黙せざるを得なかった。
黙り込んだジョフを見たヤマタノオロチが「さて」と振り向き、アカリに顔を向ける。
それに対し、アカリも顔から笑みが消えていき、苦虫を噛み潰したような表情でその場にいる全員が視界に入る所へ移動する。
「皆さんに話さないといけない事があります。パークがこうなった原因であるセルリアン……正確にはセルリアンに取り憑いている何者かの弱点、そして____」
〜〜〜〜
くそ!身体がまったく動かない……何とかして外のみんなにこの事を知らせないといけないのに……!
『まだ抵抗してたのか?いい加減諦めろよ』
っ!お前はさっきの……
『この世界は不完全かつニセモノなんだ。俺はこのジャパリパークをあるべき形に戻すだけだ』
あるべき形……?どういう事だ?今のパークの何がおかしい?
『まず、ジャパリパークにヒトはいない。この荒廃したパークではフレンズ達だけが協力して暮らしているんだ』
……何を言ってる?パークに人間がいなかったのは何年か前までの話だろう?
『違うね。パークは今もフレンズしかいない。ヒトの遺産とも言えるラッキービーストがパークの機能の一部を稼働させているに過ぎないんだ』
話がむちゃくちゃ過ぎる。まるで人類が滅亡したかのような物言いじゃないか。
『してるんだろうな。少なくともパークの中に純粋なヒトは一人として存在しない』
馬鹿馬鹿しい。そんな妄言、どう信じろって言うんだ。
『妄想でも何でもない。言ったろ?今のこの世界はニセモノなんだ。俺が元の姿に戻してやるって言ってんだよ』
……何をする気だ。
『……その前に、何故かイレギュラーが発生したな。調整しに行く必要があるか……』
ま、待て!
『心配するな。けものはいてものけものはいないんだからな。あるいは__』
っ……!
『セルリアン退治、とでも言っておこうか』
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