パフィンちゃん、起きる 1

ふと、目を開いた。


暖かいが、形容し難い謎の違和感を覚える日差しが視界を一瞬だけ白く染める。


眩しさに目を細めながらも身体を起こし、周囲を見回す。


そこには、黄色い猫のフレンズと白衣を纏った猿のフレンズが地に伏して眠っていた。


「ジョフさん!シーラさん!」


真っ先に目を覚まし、甲高い声をあげて二人に駆け寄ったのは白黒の羽と服が特徴の鳥のフレンズ。


小走りで駆け寄り、眠る二人の身体を必死に揺さぶる。

起こされた二人は唸り声をあげながらゆっくりと身体を起こし、寝ぼけ眼で辺りをぼんやりと見回した。


「……あれ……?」

「……ママぁ……?」


一人は眼鏡をかけ直し、もう一人は甘えるような声を出しながらキョロキョロと辺りをひっきりなしに見渡す。


意識がハッキリとしてきた一人、シーラは目をパチクリとさせ、パフィンと視線を合わせる。

思考も正常に働いてきてパフィンに声をかけようとした直後。


「ママぁ……ママぁ……」


僅差だが一番最後に目を覚ましたもう一人、ジョフが目に涙を浮かべながら震える声でしきりに誰かを呼び続けている。

普段の強気な姿からは想像もできないほどにいたいけな雰囲気でぐずり始めるジョフに、二人は思わず「えっ」と素っ頓狂な声をあげる。


しかしまだ寝ぼけているのか、ジョフはそんな二人に構うどころか気付きすらせず、まさしく迷子の子猫ちゃんと言わんばかりに一人泣きじゃくり続けている。


「ママあぁ……!」


声量は徐々に大きくなっていき、顔も歪んできている。いつ大声で泣き出してもおかしくないような状況に、パフィンとシーラはアワアワしながら顔を合わせる。


(シ、シーラさん!あれジョフさんですか!?)

(いやジョフだけど!ジョフだけどあれ誰よ!ジョフって素だとあんなんなの!?)

(パフィンちゃんしりませーん!あんなジョフさん初めてみました!シーラさんのはつめーひんで何とかしてください!)

(今何も持ってないし材料もないのよ!とりあえず泣き止ませないと!)



〜〜〜〜


一方その頃。

突然風景が荒廃した遊園地ではなく、タビーがヤマタノオロチとスカイフィッシュに出会ったジャングルの中に変わり、さらにその隣にいた女性__パークスタッフのアカリも加わった四人は、ヤマタノオロチを先頭に足早に歩き続けていた。


「それで、ヤマタノオロチさん。その気配というのはフレンズさんでしょうか?」

「うむ。数は三つ、あの化け物に変じていた連中だろうな」

「そうですか……」

「それより」


どこか安堵の息を漏らすかのように小さく呟くアカリ。それを一瞥したヤマタノオロチは、歩きながらも少し大きな声で話を遮る。


「ヒトのパークガイド。お前には後で聞きたい事がある」

「……はい。私からも、皆さんに話さないといけない事があります」


ヤマタノオロチの低い声に対し、アカリはそれを分かっていたかのように表情を僅かに強張らせる。

それが意外だったのか、ヤマタノオロチが目を少し丸くした時、タビーが前方を指差した。


「おい!誰かいるぞ!」


一斉に前を振り向く一行。

その視線の先に飛び込んできたのは


「ママぁ……ママぁ……!」

「ペ、ペパプダンスでーす!あれ、こんな振り付けだったっけ……」

「こ、こわくなーいよー!たーべなーいよー!」


ぐずぐずと泣きじゃくる小柄なネコのフレンズを取り囲むように、二人のフレンズが辺境の原住民族が執り行う儀式のような不気味な踊りをひたすら舞い続けるという、珍妙極まりない光景だった。

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