VS溶カ縺た◆三我ココ 4
「吐けぇ……」
一際大きな声で叫んだタビーは、ゆらりと身体を揺らしながら怪物に歩み寄る。
「吐けっつってんだぁ……!」
ギロリと睨むその瞳は未だ強い光を帯びており、うっすらと浮かぶ涙も手伝って反射するかのように光が増していく。
「…………吐
けええぇえエエエエ゛エエェェ゛エ゛エ゛エ゛ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
衝撃波。
爆音どころではない大音量の叫び声は、もはやただの声ではなく、形を成して飛んでいく衝撃波となった。
周囲の瓦礫や朽ちた床を吹き飛ばしながら、衝撃波の塊となって怪物に飛ばされた声は、その不定形の身体を大きく歪ませた。
「#g##g##g##g#ggggggggg」
全身から生える爪はバキバキと嫌な音を立てながらへし折れ、無数の手はだらりと力なく垂れ下がる。
しかし、ものの数秒も経たない内に歪んだ身体は0と1の数字や砂嵐のような雑音と共に一瞬で元に戻る。
「グアァアァア゛アァ゛アァア゛ーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
それでもなお叫ぶ事をやめないタビーは、周囲のあらゆる物が吹き飛んでどんどん更地と化していく事など気にも留めない。
対して怪物はまるで苦痛に悶えるかのような奇声を発してはまた元に戻り、それを何度も繰り返す。
その時、声の衝撃波によって巻き起こっていた暴風が、タビーの額に何かをぶつけた。
「がアッ!?」
突然の事によろめくタビーだが、すぐに体勢を整えて怪物に身構えようとする。
しかし、足元に転がるソレにふと視線が奪われる。
「これ……」
陽の光に呼応するように淡い光を反射する包み紙に描かれた、海を思わせる水色の背景と可愛らしいデザインの柑橘。
その下に添えるように『夏みかん味』という文字があるソレは。
「 ア メ 」
今まで奇妙な鳴き声をあげることしかなかった怪物に、ゆっくりと、しかしはっきりと、意味のある言葉を紡がせた。
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