VS貅カ縺代◆荳我ココ 2
「…………!!」
「しまっ……」
ヤマタノオロチとスカイフィッシュが反応するよりも早く、怪物から伸びる無数の手が二人を捕らえる。
怪物は口を開くかのように身体がパックリと縦に裂けると、もがく暇も与えずに二人をあっという間に身体の中へと押し込んでしまった。
「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」
裂けた身体を閉じて壊れた機械のような音を発する怪物は、どこにも存在しないはずの目を動かすかのように全身をビクビクと痙攣させ、ゆっくりと地面を這いずって行く。
「あ……あぁ……!」
仲間二人が喰われた。その無慈悲な現実を突き付けられたタビーは怪物がこちらに向かって来ているにも関わらず、呆然とその場に立ち尽くす。
そうこうしている内に無数の腕がわらわらとタビーに向かって伸びていき、ついにその手が肩に乗せられようとする。
……が、その手はタビーの身体に触れる直前、ピタリと動きを止める。
「…………へ……?」
自分もこいつに喰われる。諦めたように覚悟していたタビーは、怪物が動きを止めた事に思わず間の抜けた声を漏らす。
怪物は手を引っ込め、辺りを見回すかのように全身をグネグネと蠢かせると、ゆっくりとタビーから離れては観覧車の方へと戻っていく。
「…………ぐ……っ!」
放心状態だったタビーは背中(?)を向けてどこかへ行こうとする怪物に突如としてふつふつと怒りがこみ上げてきて、拳を握りしめると地面を蹴り一気に駆け寄る。
「ガアアァアアアア!!!!」
身の毛もよだつような大声をあげながら全速力で走るタビーの表情は怒りに震えるものと化しており、さらに瞳にはぼんやりとゆらめく光が灯っている。
「こんなろおぉ!!吐け!!今喰った奴ら全部吐けえぇ!!」
怪物に飛びかかったタビーは力任せに殴り付けたり乱暴に蹴りを入れる。しかし、ぶよぶよとした怪物の身体には傷一つ付かないどころか避けるように身体が凹み、衝撃を吸収してしまう。
「このっ!!このぉっ!!バカ!!アホ!!ボケェ!!」
それでも構う事なく、目にうっすらと涙を浮かべながら思いつく限りの罵声を浴びせながら爪を立てたり噛み付いたりと攻撃の手を緩めない。
「ぐうぅ……ンガゥッ!!」
「#g☆!!」
手に噛み付かれた時、さすがに痛みがあったのか短い悲鳴をあげるように奇妙な声をあげ、背中にしがみつくタビーを無数の手で無理やり引き離し、乱雑に投げ飛ばす。
「ギャィ!!」
投げ飛ばされた拍子に近くの壊れかけたレンガの壁に叩きつけられたタビーは、腹から押し出されたような叫声をあげながら地面に力なく転がる。
それでもなお立ち上がろうとするタビーだが、その目からは大粒の涙が溢れ始めている。
「ま……待てよ……逃げんな……」
絞り出すような声で呟く。しかし、怪物は聞こえないとばかりに観覧車の向こうへと這いずるようにゆっくり遠のいていく。
タビーの顔はものの数分で涙にまみれてぐしゃぐしゃになっていたが、それでも彼女は己の最大の特徴でもある声を力の限り叫び放った。
「待てよ……待てコラァ……!!
待てっつってんだ、バケモノがぁあ!!!!」
怒りと悲しみに震えるその一際大きな叫び声が荒廃した遊園地に響き渡る。
刹那、涙に濡れた瞳に宿った光が急激に強さを増す。
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