タビー、動く 2
「なっ……そ、そんなわけないだろ!だって、あの時……!」
KFP財団なんてものは存在しない。そう伝えるスカイフィッシュに思考がひどく混乱するタビーが記憶を必死に遡る。
まるで武装した兵隊のような姿をしたオスのヒト数人がヘリから現れ、アンラッキー・サンドスターを自分の体内から取り出した。
どこをどう思い出しても、それは紛れもない確固たる事実だった。
間違えるはずがない。しかし、目の前にいる正気の仲間達はその事実を真っ向から否定している。
まるで自分だけが正気ではないかのような空気に思考はさらに混乱していき、真っ青な顔からは嫌な冷や汗が流れ出る。
「……おい」
パニックを起こすタビーをしばらく眺めていたヤマタノオロチは、ふと思い出したかのように目を少しばかり見開くと、顎に手を当てて何かを考えるかのような仕草を解いてタビーに声をかける。
それに反応する隙も与えず、ヤマタノオロチはタビーの目の前までずんずんと歩み寄り、突然その顔を鷲掴みにする。
「もぎゅ!?」
「動くな。そして我の目を見よ」
顔をガッチリと掴まれたタビーは目を白黒させ、顔を逸らす事もできないままヤマタノオロチの目を見つめざるを得ない状態となる。
「…………!?」
「つい先日、イナリのキツネから盗んだ術よ。見よう見まねだが、試してみるいい機会だ」
突拍子も無い行動に驚くスカイフィッシュに背中を向けたまま話すヤマタノオロチがしばらくタビーの顔をジッと睨みつける。
まさにヘビに睨まれたカエル。凄まじい圧を感じさせるその瞳にタビーは寸分とも動く事ができず、真っ青な顔のまま固まり続ける。
が、不意にその手は顔を離れ、タビーは地面にヘナヘナと座り込む。
「……なるほどのぉ」
ヤマタノオロチは誰に言うともなく、静かにそう呟く。その表情は目に見えて強張っており、良からぬ何かを察したのだろう事が伺える。
「な……何……」
絞り出すようにようやく声を出したタビーが顔を上げると、ヤマタノオロチは険しい表情のまま静かに告げる。
「お前からアンラッキー・サンドスターを取り出したのはヒトではない。全身目玉のモンスターが人間の形を取っていただけだ」
ヤマタノオロチの言葉に、タビーは思考が追いつかず身体が固まる。そこへ間髪入れずにヤマタノオロチが再び視線を合わせるようにしゃがみこみ、タビーの顔をジッと見据える。
「こいつも試してみるか。今しがた我が見た光景を見せてやる」
ヤマタノオロチの目を見つめ続けていると、目の前の光景が瞬時に切り替わる。
そこに映り込んだのは
“1☆÷÷<66$pxx&__A」」〆」”
“や、やだ!やだ!助けもががが……”
“あっががが!?”
“○○☆68〒〒〜〒=\々9^”
まるで壊れた機械のような甲高い音を発しながら、泥のようにうねる手をタビーの口の中へねじ込んではアンラッキー・サンドスターを取り出し、それを全身に蠢く目玉で凝視する無数の化け物達の姿だった。
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