タビー、動く 1
ヤマタノオロチの酒を無理やり飲まされて正気に戻ったタビーは、彼女とその横にいるスカイフィッシュと共に異様な光景の中を歩み進む。
すれ違うフレンズ達はどこか機械的な挙動で動き回り、表情に一切の変化が見られず、まるで決められたかのように同じ場所を往復する者もいる。
隣をすれ違ってもまるで意に介さないとばかりに視線を向ける事すらせず、タビーはまるで人形のような彼女らにビクビクしながら視線を向けていく。
「な、何だよみんな……全然話しかけてこないじゃんか……」
「#|^1………今はモンスターと呼べばいいか。さっきも言ったが、奴が原因でこうなっているんだろうさ」
フレンズ達に目もくれないヤマタノオロチはスカイフィッシュを傍らにどんどん先へ進み、タビーはその後を慌てて追いかける。
ジャングルを抜けてさらに歩くと、いつも客が往来するルートに出る……はずだった。
道がない。正確にはコンクリートで舗装されているはずの道が、枯れかけの草や何か大きな力によって折れた木が点々と生える土の獣道と化していたのだ。
「な……なんで道がないんだよ……!?」
足下をキョロキョロと見回すタビーが土を掘り返す。
整備が行き届かないという事自体があり得なかったが、もしかしてと思い土の下に固く冷たいコンクリートがあるのを期待したのだ。
結果、出てきたのは硬い石ころとミミズ、そして何かの幼虫だけだった。
それと同時に、薄ら寒い何かを感じて周囲をゆっくりと見渡す。
『ヒト』がいない。避難警告を受けて緊急避難エリアに客が向かったのだからいないのは当然、という事ではない。
このような異常事態に備えて出動する、KFP財団に所属するヒトが一切見当たらないのだ。
アンラッキー・サンドスターでの一件からパークで異変が起きると財団の職員達が速やかに現れるのをタビーは知っていた。
しかし、この不気味な世界を正常にしようと出動している職員が一人も見当たらない。
そして上空を飛んでいるであろうヘリは影も形もなく、遠くからプロペラが回る音すら聞こえない。
「ざ、財団の連中!あいつら何やってんだよ!非常事態だぞ!何で出動してないんだよ!」
「ざいだん……?」
喚くタビーを見るヤマタノオロチは、まるでそれが理解できないとばかりに眉を潜め首を傾げる。
「そう言えばそのような組織があると耳には挟んだが……」
「あ、あるよ!俺、あいつらにアンラッキー・サンドスターを取り出してもらったの、あんたも知ってるだろ!?つかめっちゃ近くにいたはずだけど!」
「…………」
アンラッキー・サンドスターを巡る騒動に、確かにヤマタノオロチは間接的ながらも関わっていた。しかし、今の彼女はどうにもピンとこないようで、隣でふわふわと浮かぶスカイフィッシュに目配せをする。
それに呼応するように視線を交わらせたスカイフィッシュが、タビーの目の前でふわりと地に足を着け身振り手振りで全身を動かす。
「……;……;……?…………?」
「うわっ……い、いきなり何だ?」
突拍子もない彼女の行動に目を点にするタビー。
少しして動きがピタリと止まると、そのすぐ後ろで弁明するようにヤマタノオロチが口を開く。
「そいつは都で色々とやっとるらしくてな。パークの内情にもそこそこ耳が付いとる。そんな奴が『KFP財団なんて組織は元から存在すらしていない』と言っとるぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます