VSフレトラマンシーラ 2
〜〜〜〜
「…………うぅーん……?」
手や顔に固くひんやりとした感触が伝わる。
意識がはっきりしてくると、自分が地面に倒れ伏している事がわかった。
まだぼんやりとした意識のまま、パフィンは身体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。
足下にはレンガ造りの床が広がり、周囲を見渡すと家やビルが建ち並ぶ居住エリアである事がわかった。
「はれ……?」
確か自分達はじゃんぐるエリアにいたはず。
アーノルドがジープから飛び出し、急にクリスが車を飛ばし始めたかと思うと、人型の何かが襲いかかってきて__
「えーっと、えーっと……」
パフィンは必死に記憶を辿っていく。が、思い出せるのはその何かがやたらと発していた「イヤッ!」「トォーッ!」という掛け声や、「セルリアロー!」「セルリフォール!」という叫び声のみ。
肝心の『あの時自分達はどうなって、何がどうしてここにいるのか』という部分がよく思い出せないのだ。
「……あ!シーラさーん!ジョフさーん!クリスさーん!タビーさーん!」
思い出したかのように、パフィンはこの場にいない皆の名前を叫ぶ。
しかし、返ってくるのは自分の声のこだまで、誰かの返事はおろか気配すら感じない。
それどころか、先程まで自分達が乗っていたジープすら影も形も見当たらないのだ。
空へ飛び上がって街中を見渡しても誰かが歩いている事もない。ゴミ一つ落ちてもいない。
今この場で動き回っているのは、パフィンただ一人だった。
「パフィンちゃん、もしや迷子ぼっちですかぁ……?」
地面に降り立ったパフィンはぽそりと呟き、次第に湧き上がってくる孤独感に涙を浮かべる。
そのまま大声で泣き叫びたくなる程に悲しくなった時、足下に何かが転がっているのが見えた。
「ぐすっ…………これ……」
小さな包み紙。それはパフィンにとって見覚えのあるもので、同時に自分が今一番会いたい男の姿を瞬時に想起させるものだった。
「あめちゃん…………おじさん!」
拾い上げた包み紙はまだ開かれておらず、透明になっている部分から宝石のような光沢を帯びる小さな飴が見え隠れしている。
それは、パフィンがかつて男からもらっていた飴とまったく同じデザインだった。
おじさんが近くにいる。根拠はないが、それを確信したパフィンは涙を拭い取ると飴を大事そうに握りしめながら辺りを再度見回す。
すると、少し離れた所にまたも包み紙が落ちているのが見えた。
「あめちゃん!」
それを拾おうと駆け寄り、また包み紙を拾う。するとまたも少し離れた所に同じ物が落ちている。
まるで道を作るかのように落ちている飴を次々に拾い上げていく事に夢中になっているパフィンは、自分が街のある風景からどんどん遠ざかって森の中へと入っていく事に気付いていなかった。
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