VSカオスなタビー⑦
〜〜〜〜
一方その頃、シーラとジョフはトンネルをひたすら走り続けていた。
パフィンが飛んでいった時は距離と言える程の長さもなかったはずだが、二人が今走っている道はまるで無限にも感じられる程に長く長く続いていた。
「はぁ、はぁ……ど、どうなってるでち!全然出口が見えないでち!」
「……」
ヒトよりも身体能力が優れているフレンズであるジョフ達も、絶え間なく走り続ける事でさすがに息切れを起こしている。
その隣で、シーラは何かを考えるように俯いては速度を少しずつ落としている。
そして思考が何かの答えに辿り着いたのか、ふと顔を上げると壁に背中を当てて完全に立ち止まる。
「これって……」
そして、自分達が走ってきた方の道に向けて目を凝らす。
すると、向こうから息を切らして走ってくる何者かの影が見えてきた。
それはつい先程まで一緒に走っていたジョフだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
「ジョフ!ストップ、ストップ!」
一緒に走っていた時よりも明らかに減速していたジョフの前に立ち塞がるのは容易であり、肩に手を置いて地面に座り込ませるのもまた同様だった。
「シ、シーラ……お前、いつの間に先回りしてたんでち……?」
「違うの!シーラね、さっきからここで立ち止まってたの!閉じ込められちゃってるよ、これ!」
「ふぇ……?」
シーラの言葉の意味が理解できず、肩で息をしながらきょとんとした顔になるジョフ。
それを見たシーラは一呼吸置き、再びゆっくりと口を開く。
「いい?原理は分からないけど、このまま走っても同じ場所をグルグル回ってるだけでパフィンに追いつけないの。どうにかしてここを抜け出さなきゃ!」
「で、でもどうやって抜け出すでち?」
「うぅーん……」
顎に手を当てて思考を巡らせながら周囲を見渡すシーラが壁を品定めするように眺めていく。
やがてゆっくりと壁に沿って歩き始める彼女に付いていくようにジョフも後ろから壁に沿って歩き出し、木の壁に爪で引っ掻き傷の一本線を作っていく。
と、その時だった。
“ゴッ”
「でち?」
何気なく木の壁に傷を付けていた時、爪が木とはまた異なる硬さの何かに引っかかった。
そこへふと目を向けた途端、ジョフの顔は瞬く間に真っ青になっていき、その場から脱兎のごとく飛びのく。
「ぎ、ぎにゃあぁあ!?」
「ジョフ!どうしたの!?」
悲鳴に驚いたシーラが、地面にへたり込んでアワアワと言葉にならない声を漏らすジョフに寄り添いながら彼女が指差す方向に目を向ける。
その先には、木と木のほんの僅かな隙間から眼球のような何かがギョロギョロと忙しなく周囲を見回しており、ソレを見たシーラもギョッとした顔でそれを凝視する。
「……何あれ……」
『何だあれは』という疑問が口に出るものの、同時に『もしや』という思考が働き始めていたシーラは懐からスパナを取り出して眼球に向かって歩き出す。
「な、何するつもりでち……?」
「……もしコレがここにシーラ達を閉じ込めてる原因なら……」
「え、それってどうい__」
言い終えるまでにシーラはスパナを振り上げ、一呼吸置いて目を閉じた後、意を決したように目を見開いて眼球に向かって勢いよく叩きつける。
すると、「パッカァーン!」という軽快な音がトンネルに響くと同時に大きな地響きが起こり始めた。
「ひにゃあぁあ!?」
「ジョフ!!」
轟音と共に周囲の壁や天井がバラバラと瓦礫のように崩れ落ちていく。
まるで硬い物をぶつけたコンクリートのように崩壊する木が倒れそうになるのを見たシーラがジョフに駆け寄り飛び込むと同時に抱き寄せると、空間が何とも形容しがたい奇妙な音と共に歪み始める____。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます