VSカオスなタビー⑤

ところでいなくなったパフィンはと言うと、二人が話し込んでいる内に道の奥へと一人で進んでしまっていたのだ。


「ふっふーん♪パフィンちゃん、考えましたよー!」


何やら得意げな表情を浮かべながら鼻歌混じりに低空飛行で滑るように突き進むパフィン。

彼女の心中はこうだ。


『二人ともこわがってますねー。あ、そうだ!パフィンちゃんが先に進んでー、安全をかくにんして戻ってくればー、二人も安心して先にすすめまーす!パフィンちゃんかしこいでーす!』


後ろの二人が真っ青な顔で追いかけて来ている事を知る由もないパフィンは、薄暗い木のトンネルをどんどん進んでいく。

しかしトンネル自体はそこまで長くなく、少しするとオレンジ色の妖しい光に照らされるドーム状に開けた空間へ飛び出した。


「ストーップ!っと!おー、明るいでーす!」


前に進みながら辺りをキョロキョロと見渡すパフィンは、前方に一つの小さな影がこちらに向かって手を振っているのが見える。

それは、以前アンラッキー・サンドスターを体内に取り込んだ事で理不尽と呼ぶには度が過ぎるレベルの不幸に見舞われたタスマニアデビルのタビーだった。


「おほホほ!用薬、要約!ようやく来ましたね?待ちくたびれタぞパフィンちゃん!」


タスマニアデビルのタビー、のはずだ。


「えっと……タスマニアデビルのタビーさん、ですね?」

「ブラーボゥ!ワガはイのアダ名を知っているとは何ともステキなコトなり!風船をあげよう!」


しかし、その風貌、容姿、口調は明らかにタビーのそれとは異なる点が多い。


まず、先程三人に語りかけていた不気味な声が彼女の口から発せられている。壊れかけのオモチャが発するような微弱なノイズが言葉の端々から僅かに聞こえ、ほのかな不快感を与える。


次にその容姿。エプロンがトゲトゲした触るのを躊躇させるデザインに変わっていたりアームカバーが丸太のごとく肥大化していたりとおかしな点は多々あるが、何より一目で異常さを感じるのは顔だった。

目の白目部分が真っ黒になり、そして瞳が白くなっている。そしてニヤついた口は耳まで裂けているのかと見紛う程に大きく開かれ、口の中から見える鋭い牙は青や緑、紫などカラフルな色合いになり、しかも光の反射に影響されている訳でもないのに色が目まぐるしく変化しているのだ。


どこに隠し持っていたのか大量の風船を上空に浮かび上がらせるタビーの異常な姿に、さすがにパフィンも良からぬ何かを察して表情に僅かな曇りを見せ始める。


「さぁさあパフィンよあそびましョ!あとの二人もすぐ来るけれど、そレまでお先に遊ぶのさ!」

「あ、遊ぶって、何をするんですかぁ……?」

「なぁーに、ルーるはとってもカンタン!」


と、タビーが天を仰ぐように両腕を広げた瞬間、手のひらに現れた黒い何かがパフィンに向かって高速で飛んで来た。


「ひゃあぁ!?」


間一髪で横に飛びのいて回避したパフィン。

ついさっきまで自分がいた方へ目を向けると、それは野球ボール程のサイズの黒い球体に大きな一つの丸い目が付いた____かつてフレンズ達に害を成していたとあるモンスターによく似たモノだった。


「どちらカがぶっ倒れるまでの……ガチンコ!ばトルげぇーーッむ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る