VSカオスなタビー②

「……今、誰かの声が……?」


不気味に響いてきた声に沈黙した三人。

その沈黙を一番に破ったのはシーラで、それに続くようにパフィンが飛び跳ねる。


「この声、タスマニアデビルさんです!ってことは避難エリアから出てったのはタスマニアデビルさん!?」


“寂しいよぅ……ひとりハとってもツライよぅ……はやクこっちに来てちょんまげ……”


「待っててくださーい!パフィンちゃんが今いきまーす!!」

「ちょちょちょストップ、ストップ!待ってパフィン!」

「明らかにあやしいでち!危ないでち!!」


どこか音程が外れたかのようにも聞こえるおかしな声が再び響くと、それを聞いたパフィンが頭の羽根を広げてふわりと浮かび上がる。

しかし、その不気味な声から嫌な予感を察していたシーラが慌ててパフィンの前に立ちはだかり、ジョフもパフィンを地面に引きずり下ろさんと背中にしがみ付いて体重をかける。


「お゛もいでぇず!?」

「んなぁ!?れでぃーに向かって何てこと言うでちぃ!!でっぢい゛ぃ゛ぅ!!」

「あーもう!とにかく二人とも落ち着いて!ちょっと聞いて!」


騒ぐ二人を引き離すと、シーラは宥めるように二人の肩に手を置きながら語り始める。


「さっきの声、明らかにおかしいよ。なんか壊れたロボットみたいな音が混じってたよ。行ったら確実にヤバイ事が起きると思うの。だからさ、ここは一旦引き返そう?」

「で、でもでも……さびしいって言ってましたし……」

「今のパークにはガイドさんや色んな職員がいるんだからさ、シーラ達だけでどうこうできない問題だったらガイドさん達を頼ろうよ。もしもパフィンが危ない目に遭ったら、今度はさっき話してたおじさんが悲しい思いをする事になるよ?」

「あぅ……」


シーラの説得に、興奮するようにバタつかせていたパフィンの羽根がゆっくりと落ち着きを取り戻していく。


「大丈夫だって。きっとおじさんも見つかるし、迷子のタスマニアデビルだって見つかる。だから今はとりあえず避難エリアに戻…………」


と、その時。パフィンから視線を退路へと向けたシーラの言葉が不意にかき消されるかのように止まる。

それだけでなく、二人の肩に置かれた手が僅かに震えているのだ。


「シーラ?ど、どうしたんでち?」

「シーラさん……?」


何事かと目を丸くした二人は顔を合わせると、シーラの顔に視線を移す。

その表情は何か恐ろしいものを見たかのように引きつり、青ざめ、目を見開いて一点を凝視している。


二人もそれに倣うようにその方向へと視線を向けると、それに重なって振り絞ったかのようなかすれ声でシーラが呟いた。


「み……道が、消えた……!?」

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